最後のページを閉じたなら
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、クロノヴァイスに相応しくないわ』
相手が誰かも解らないままにそう告げられたナギは、まず魔法を封じられた。そして―――――暫くして現れた災厄の道化の面々によって、ナギはボロボロに傷ついた。
血で汚れていない箇所を探すのが困難なほどに全身が赤く染まり、痛みの度に絶叫して声も嗄れ、このまま死ぬんだと絶望しかけていたのだという。
が、次に目を覚ました時、ナギはこの部屋にいた。
全身にあった傷は跡すら残さず癒えていて、問題なく体は起こせるし歩く事も出来て、声も問題なく出る。訳の解らないままに戸惑っていると、現れた赤い髪の女性がこう言った。
『大丈夫、ここにいる限りは安全よ。またあんな目に遭いたくなかったら、暫くここにいる事をお勧めするわ』
その言葉は本当で、ここにいる限りは何も起きなかった。洋服は時々同い年くらいの少女が届けに来てくれたし、食事も同じように届けてくれた。突然行方不明になって周りに迷惑をかけているだろうとは思っていたが、どうしようもなかったらしい。
それはそうだ。下手をすればナギは死んでいたかもしれない。生きていてくれただけでも十分だ。
――――そして、先日。
戦いの音に気づいて、ナギは見つけてほしいと願った。
「……という訳なの」
ナギの説明に、クロノは「そうか」と頷く。
“赤い髪の女性”というのは血塗れの欲望のギルドマスター、シグリットだろう。まさか闇ギルドのマスターに恋人を助けられるとは思わなかった。
「……ねえ、クロ君」
さて、これをどう上に報告するか……なんて考えていたから、ナギの声に反応するのが少し遅れた。腕を解きクロノの正面に立つナギは、少し悩んでから意を決したように口を開く。
「クロ君って、恋人いるの?」
「……はあ?」
随分マヌケな声が出た、と自分でも思う。が、これは仕方ない。
だってクロノの恋人は、目の前にいるナギなのだ。そのナギに「恋人はいるのか」と聞かれるなんて、はっきり言っておかしい。
どうやらクロノの言いたい事に気づいたらしいナギが、慌てて言葉を付け足す。
「あ、あのねっ…6年も経ってるし、クロ君も新しい彼女がいるのかなー……って」
どこか不安そうに問いかけるナギだが、クロノからすれば頭を抱えたくなるほどの事態だ。
ナギがいなくなって6年。告白される事がなかったと言えば嘘になる。だが、その全てを“彼女がいるから”と断り続けるほどにはナギを愛しているクロノに、新しい彼女なんているものか。
「…あのな、ナギ」
「うん」
ポン、と肩に手を置きどうにか口を開いたクロノに、やや硬い声で答えるナギ。今の質問で一気に体
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