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Element Magic Trinity
最後のページを閉じたなら
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ういう時に限って、デスクワークが得意な隊員は体調を崩している。この部隊で1番クロノにあらゆる事を押し付けられているであろうラージュは熱を出してしまったらしく、そうなれば自分でやるしかないのだ。他の隊員に任せようかとも考えたが、任せる前に逃げるように行ってしまった。

「クロノヴァイス様」
「ん?」

青い髪をぐしゃぐしゃにして呻いていたクロノに声が掛かる。
声のする方に顔を向けると、明るい水色の髪が目を引く少女がこちらを見ていた。

「えーっと…アロマ、だっけ?」
「はい」

頷く少女の名は、アロマ・トゥーラ。カトレーンの家で働いていた侍女の1人だ。
明るい水色のボブヘアに、ロング丈のメイド服。ヘッドドレスで飾る頭はクロノの肩辺りにある為、立ち上がると見下ろす体勢になる。
事情聴取の為に連行された使用人達だったが、それはそれで大変だった。これほど広い土地を管理するのだから人数は多いだろうとは思っていたが、まさか百人近くいるとは。
分担していたものの、その全員を覚えているかと聞かれればそれは怪しい。彼女の事を覚えていたのは、クロノが担当した中で1番歳が近そうだったからであって、そうでなければ多分忘れているだろう。

「どうかしたのか?」

事情聴取を受けた使用人達は、今日の内に半分以上が釈放された。他はまだ聴取を受けている。
アロマも聴取を受け終った1人で、この土地に詳しい人間が1人でもほしいからと呼ばれた―――と、本人が言っていたのを思い出す。
ぐいっと体を伸ばしつつ問い掛けると、アロマはもう1度頷いた。

「こちらへ、来て頂けますか」
「?おう」

そう言って歩き出したアロマの後ろ姿を、不思議に思いながらもクロノは追いかけた。






「ここです」

アロマが足を止めたのは、倉庫の前だった。
つい先ほど、クロノが「第八倉庫」と地図に書いたその場所にアロマは入っていく。扉を開けて「どうぞ」とこちらを見るアロマに軽く頭を下げたクロノは、中に入った。
パタン、と扉を閉める音を背後に、クロノは辺りを見回す。

「……ここが、何なんだ?」
「先日、シャロン様が仰ったんです。“この倉庫には人を入れるな”と」
「それで?」
「命じられた通りに誰も入れませんでしたが…御覧の通り、ここはただの倉庫。用がない限りは誰も入りません。それなのにわざわざ“人を入れるな”と命じるのには些か引っかかって…もしかしたら、ここに何か隠すような事があるのかと」
「なるほど」

戸惑うような声色のアロマに頷き、もう1度辺りを見回す。庭師が使うであろうハサミや脚立、肥料が置かれたこの倉庫に、隠すようなものはなさそうに見える。

「何もねえな」
「はい。私の考えすぎかと思ったのですが…先日、ティア様が
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