最後のページを閉じたなら
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はこれ以外のコートを着ようとしない。
その様子を「リーダーって意外に頑固だよねー」等と部下は言うが、シグリットは知っている。
彼がこのコートを好むのは、アルカといた頃を思い出せるように。最近、コートの下に着るトップスに白を選ぶ回数が多くなった事にだって、気づいている。
「マスター」
呼ぶ声に、シグリットは目線をエストから自分の前に向ける。
展開した魔法陣の上に立つ明るい水色の髪の少女は、真っ直ぐにこちらを見つめていた。
「何かしら、“十三番目”」
「現在カトレーン邸を評議院第一強行検束部隊が捜索中……どうしますか?」
「そうね…そろそろいいかしら」
シグリットが興味本位で手を差し伸べた彼女も、待っている事だろう。このままでは忘れ去られてしまうだろうから、そろそろ頃合いだろうか。
ふと横を見れば「いいんじゃないかな」と笑うエストの姿。
「…ええ、お願いするわ。ちゃんとクロノヴァイス様をお連れして。他の人はダメよ」
「了解しました」
こくりと頷いた少女は、魔法陣の中に消えていく。
再び窓の前に立ったシグリットは、微笑んだ。
「また会いましょう?妖精の尻尾」
「次に会う時には、私は復讐を終えているかしら」
それが聞こえたのは、同じ部屋にいたエストだけだった。
だだっ広い土地を、クロノは溜息を吐きつつ見回していた。
昨日から始まった捜索は、全くと言っていいほど進んでいない。人数はそれなりにいるのだが、土地が広すぎるのだ。
例えば、倉庫だけでも軽く十はある。他にも侍女や庭師といった使用人が暮らす建物に、ティアが暮らしていたという小屋。それ以外にも沢山の小屋や建物がある。本宅の全部屋を捜索するのに何時間も費やすような家は、厄介な事この上ない。
この家で暮らしていたクロノでさえ、全てを把握していないのだ。妹や弟を呼ぼうかとも思ったが、その考えはすぐに却下する。弟は動ける状態じゃないし、妹を呼ぶなんて以ての外だ。
「……広すぎて腹立ってきた」
ポツリと呟くが、それに答える声はない。隊員は皆、この広い土地を駆け回っている。こう表現すると遊んでいるようにも聞こえるが、実際には死に物狂いで捜索中だ。
そんな中クロノが何をしているのかといえば、彼は彼で仕事に勤しんでいる。用意された椅子に座り、大きな紙にカトレーンの地図を書いているのだ。大雑把に書かれた建物らしき四角に「第一倉庫」やら「昔飛竜飼ってた小屋」やら「使われてるの見た事ないけど多分必要な建物」やら書き込む作業は意外と大変で、元々デスクワークが得意ではないクロノには苦痛でしかない。
「くっそー、ラージュの奴…」
こ
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