暁 〜小説投稿サイト〜
Element Magic Trinity
最後のページを閉じたなら
[13/20]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
はこれ以外のコートを着ようとしない。
その様子を「リーダーって意外に頑固だよねー」等と部下は言うが、シグリットは知っている。
彼がこのコートを好むのは、アルカといた頃を思い出せるように。最近、コートの下に着るトップスに白を選ぶ回数が多くなった事にだって、気づいている。

「マスター」

呼ぶ声に、シグリットは目線をエストから自分の前に向ける。
展開した魔法陣の上に立つ明るい水色の髪の少女は、真っ直ぐにこちらを見つめていた。

「何かしら、“十三番目”」
「現在カトレーン邸を評議院第一強行検束部隊が捜索中……どうしますか?」
「そうね…そろそろいいかしら」

シグリットが興味本位で手を差し伸べた彼女も、待っている事だろう。このままでは忘れ去られてしまうだろうから、そろそろ頃合いだろうか。
ふと横を見れば「いいんじゃないかな」と笑うエストの姿。

「…ええ、お願いするわ。ちゃんとクロノヴァイス様をお連れして。他の人はダメよ」
「了解しました」

こくりと頷いた少女は、魔法陣の中に消えていく。
再び窓の前に立ったシグリットは、微笑んだ。

「また会いましょう?妖精の尻尾(フェアリーテイル)








「次に会う時には、私は復讐を終えているかしら」

それが聞こえたのは、同じ部屋にいたエストだけだった。











だだっ広い土地を、クロノは溜息を吐きつつ見回していた。
昨日から始まった捜索は、全くと言っていいほど進んでいない。人数はそれなりにいるのだが、土地が広すぎるのだ。
例えば、倉庫だけでも軽く十はある。他にも侍女や庭師といった使用人が暮らす建物に、ティアが暮らしていたという小屋。それ以外にも沢山の小屋や建物がある。本宅の全部屋を捜索するのに何時間も費やすような家は、厄介な事この上ない。
この家で暮らしていたクロノでさえ、全てを把握していないのだ。妹や弟を呼ぼうかとも思ったが、その考えはすぐに却下する。弟は動ける状態じゃないし、妹を呼ぶなんて以ての外だ。

「……広すぎて腹立ってきた」

ポツリと呟くが、それに答える声はない。隊員は皆、この広い土地を駆け回っている。こう表現すると遊んでいるようにも聞こえるが、実際には死に物狂いで捜索中だ。
そんな中クロノが何をしているのかといえば、彼は彼で仕事に勤しんでいる。用意された椅子に座り、大きな紙にカトレーンの地図を書いているのだ。大雑把に書かれた建物らしき四角に「第一倉庫」やら「昔飛竜(ワイバーン)飼ってた小屋」やら「使われてるの見た事ないけど多分必要な建物」やら書き込む作業は意外と大変で、元々デスクワークが得意ではないクロノには苦痛でしかない。

「くっそー、ラージュの奴…」


[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ