最後のページを閉じたなら
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いるのだ。だったら、それに突っ走っていくタイプのナツが口を出す必要はない。
考えも力も、全てを信じているからこそ、何かを言う必要はない。
「おう」
それだけ返して、2人はそれぞれの作業に没頭する。
窓の外に広がる光景に、シグリットは息を吐いた。そこにあるのは絶景―――ではなく、滅んだ街。
いや、正しくは“滅ぼした街”だろう。この街をここまで追い込んだのはシグリット達だ。無駄に人を殺すなとは命じたけれど、どうやら思った以上に人が死んでいる。
「すまないね、シグリット。想像以上に抵抗されてね…命令に背いてしまったが、少し消させてもらったよ」
杖を片手に歩み寄る夫に微笑んで、シグリットは思い出す。
あの後――――シャロンが倒れ、妖精の尻尾の勝利が絶対になった時。そうなるであろうと予想していたシグリットは、評議院が塔に乗り込む頃には既に姿を消していた。隣で微笑むエストも、“十二宮”の面々も。
“天秤宮”が抜けた事に落ち込むメンバーもいたが、元々仲間意識が高い訳ではないのが闇ギルドというもので、三日もしないうちに何事もなかったかのように動いている。エストも息子の事でいろいろと考えていたが、どうやら復活したようだ。
「仕方ないわ。邪魔しなければ何もしないと言ったのに邪魔をしてきたのは向こうだもの。それに、この街には“あれ”がある。結局、滅んでもらわないと困るのよね」
「言っている事がシャロン様のようになってるよ」
「やめて頂戴。あの女はもう私達の主じゃないわ」
エストの指摘に、不快そうに眉間に皺を寄せる。
闇ギルドと繋がり、歯向かう者を殺し……そんなシャロンが逮捕されないはずもなく、今は牢屋の中だ。彼女に力を貸す必要もなくなり、血塗れの欲望は自由に活動している。
「でも驚いたよ。まさかカトレーンの一族を潰す為に妖精の尻尾を巻き込むなんてね」
「私達だけでもよかったんだけど、兵は多い方がいいでしょう?それに、自分の知らない所で潰されてたらティア嬢に失礼じゃない。息子がお世話になってるんだもの、それくらいの気遣いは必要だと思って」
そう言ってクスクスと笑うシグリット。本当に彼女は残酷だと、エストは思う。
シグリットをここまで動かすのは、憎悪だ。闇ギルドになってまで叶えたい事があるから、どんな残酷な事も平然と遣って退けてしまう。あの日からずっと憎み続ける相手を消す為に、このギルドはある。
「それでどう?“あれ”は消せたかしら」
「大丈夫じゃないかな。事実、私の役割はなかったし」
「そう」
黒いコートの裾が風に揺れる。あの頃と同じコートはデザインは古いし全体的によれ始めている気がするが、エスト
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