第百八十九話 その一手その一
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第百八十九話 その一手
鳥取城は織田家の大軍に完全に囲まれていた、最早蟻一匹たりとて出られる程にだ。その鳥取城を本陣から見ながらだ。
羽柴は主将である長政にだ、こう言った。
「ではいよいよ」
「その一手をですな」
「打ちます」
そうするというのだ。
「これより」
「おそらくは」
「城の兵糧がですな」
「完全になくなった頃かと」
長政もそのことを察して言うのだった。
「そう思いまするが」
「はい、そうですな」
「では」
ここでだ、こう言った長政だった。
「間も無く総攻撃、ではないですな」
「左様です、ここは一兵も失うことなく」
「攻めてですな」
「左様です」
それでだというのだ。
「ここはそれがしと小竹がです」
「お二人がですか」
「はい、城に行き」
そしてだというのだ。
「開城を促します」
「そうされますか」
「そうです、城内の兵達の命は助けるという条件で」
その話を出してというのだ。
「勿論城主の吉川経家殿も」
「あの御仁も」
「お命を助けるということで」
その話でだというのだ。
「城を明け渡してもらい」
「そうしてですか」
「因幡から去ってもらいます」
「左様ですか、しかし」
そうしれはと言う長政だった。
「それでは毛利の将兵が丸々生きて」
「そうしてというのですか」
「危ういかと」
四千の兵が生きるのだ、経家もだ。
「今後」
「いえいえ、これがよいのです」
「よいのですか」
「毛利が降ればです」
その時にというのだ。
「その四千の兵も我等の兵となりますから」
「だからですか」
「はい、ここは四千の兵を助けましょう」
「攻めさせず餓え死にさせず」
どちらもさせずとだ、長政も言う。
「そのうえで」
「しかも当家が敵であろうとも命を助けると聞けば」
「次次にですな」
「敵兵も安心して降りますので」
「確かに」
ここで山中も言った。
「降っても殺されるのならば誰もが必死に戦いますな」
「どうせ死ぬならと」
「さすればですか」
「降った者は助けた方がよいのです」
「そうなりますな」
「そして織田家の兵とすれば」
「さらに戦力が増えますな」
兵が増える、即ちそれだった。
「だからですか」
「それでは」
羽柴は確かな笑みで山中にも応えてだ、そしてだった。
あらためてだ、主将である長政に対して言ったのだった。
「では今より」
「小竹殿とですな」
「鳥取城に参ります」
「わかり申した、しかし」
「しかしとは」
「若し降らなければ」
「その時は致し方ありませぬ」
羽柴もその場合のことは考えていた、そのうえで言うのだった。
「餓え死にしてもらうか時がなけれ
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