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美しき異形達
第三十二話 伊勢神宮その十二

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「はじめるのね」
「そうなるわね、それでは」
「ここではじめましょう」
 こう言って怪人達が出て来た、その姿はというと。
 それぞれ植物だった、どちらも禍々しい緑の姿だった。薊が彼女達のそれぞれの姿を見て眉を顰めさせたうえで言った。
「ウツボカヅラにハエトリソウね」
「どっちも食虫植物かよ」
 薊は怪人達の姿を見つつ菖蒲の言葉を聞いて言った。
「いいもんじゃないな」
「薊ちゃん食虫植物嫌いなの?」
「あまりな」 
 どうもとだ、薊は向日葵の問いに答えた。
「好きじゃないことは確かだな」
「そうなの」
「どうにもな」
 また言うのだった。
「気色悪く感じてさ」
「それでなのね」
「ああ、好きじゃないよ」
 実際にそうだというのだ。
「どうにもな」
「じゃあこの怪人の相手は」
「いや、相手するのは平気だからさ」
 戦うことはというのだ。
「それは安心しなよ」
「いえ、待って」
 前に出ようとした薊をだ、菖蒲がだった。
 制してだ、そのうえでこう言うのだった。
「最近身体がなまっていたから」
「菖蒲ちゃんがかよ」
「ええ、戦わせて」
 こう薊に言うのだった。
「そうさせてくれるかしら」
「ああ、それじゃあな」
 薊も菖蒲がそう言うのならだった、強く言わずに。
 前に出ようとしていたその足を止めてだ、あらためて菖蒲に言った。
「頑張ってくれよ」
「私は勝つわ」
 これが菖蒲の返事だった、そして。
 桜も出てだ、こう言うのだった。
「では私も」
「桜さんもなのね」
「はい、そうさせて下さい」
 いつもの礼儀正しい口調での申し出だった。
「今回は」
「わかったわ、それではね」
「はい、それでは」
「二対二になったわね」
 ウツボカヅラの怪人、背中にそれを背負っている怪人が言って来た。ハエトリソウの怪人は無数のそのトラップを身体に付けている、どちらも嫌になる緑色だがその外観はそれぞれ全く異なるものだった。同じ食虫植物であっても。
「丁渡いいわね」
「ええ、そうね」
 その通りだとだ、ハエトリソウの怪人も言うのだった。
「数はね」
「私達は大勢で一人をいたぶることはしないから」
「丁渡いいわね」
「そのことは興味深いわね」
 菖蒲は怪人達の今の言葉に目を光らせて言った。
「何故貴女達が一対一、二対二の勝負にこだわるのか」
「それは私にもわからないわ」
「私にもよ」
 怪人達の今の返事は素っ気ないものだった。
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