第三十二話 伊勢神宮その八
[8]前話 [2]次話
「それも食べるのよ」
「海と山ね」
「伊勢だからね」
伊勢は前に海がありそして後ろは山だ、まさに山海の珍味が揃う場所なのだ。そのことにおいては大阪をも凌駕するだろうか。
「そうなるわ」
「ううん、最高の美食ね」
「日本のね」
「日本って海も山もあるから」
特にこの伊勢はだ、菊はこのことについても言うのだった。
「美味しいものがふんだんにあるのね」
「そうなるわね」
「じゃあね、これも食べて」
「そして山の幸もね」
菊は菖蒲とも話してだ、そのうえで。
次の店に入った、そして麦とろろも食べるのだった。
菖蒲はその麦とろろを食べてだ、感銘を以て言った。
「これもね」
「美味いな」
薊が菖蒲に応える。
「これ普通のとろろじゃないな」
「自然薯よ」
「普通に売ってる山芋じゃないんだな」
「そう、そちらになるわ」
「だからか」
それで、とだ。薊はその麦とろろを食べながら唸った。
「山芋とはまた違う味なんだな」
「そうなるわ」
「いや、伊勢うどんも食ったし漁師汁も食ったけれど」
「それでもね」
「普通に食えるよ」
満腹感も気にならないというのだ。
「これはさ」
「美味しいからね」
「確かに美味いな」
薊は麦とろろを食べつつ菫に応える。
「麦飯ととろろって滅茶苦茶合うからな」
「そうそう、普通の白い御飯よりもね」
「合うからな」
それで、というのだ。
「これは美味いよ」
「あとこれ食べたら」
それならとだ、また裕香が言って来た。
「最後はね」
「赤福餅だよな」
「これは忘れたらいけないわよね」
「お伊勢さんに来たらな」
「最後はあれにしましょう」
「予定通りな」
麦とろろを食べつつだ、薊は裕香に応えた。そうしてだった。
その話をしてからだ、麦ととろを食べ終えて。
そして最後にだった、赤福餅の店に入ってそれを食べた。薊は赤福まで食べてそうしてだった。満足している笑顔で言った。
「いや、最後にこれ食うとさ」
「お伊勢さんでね」
「ああ、締めっていう感じでな」
それで、というのだ。
「いいな」
「お茶もいいわよね」
裕香は赤福と一緒に出ているお茶も飲みつつ薊に応えた。
「こちらも」
「そうだよな、こし餡にな」
「中の白いお餅もよくて」
「そしてね」
「お茶な」
「どっちもいいわね」
二人は笑顔で話す、そして。
他の面々も赤福と茶を楽しんでいる、そうしながらだった。
向日葵はしみじみとした感じでだ、茶を飲みながら言った。
「いや、海に山にお菓子ってね」
「お伊勢さんって美味しいよな」
「神様がご馳走してくれてるみたい」
薊に応えつつこう言うのだった。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ﾍﾟｰｼﾞ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿ｻｲﾄ〜
利用規約/ﾌﾟﾗｲﾊﾞｼｰﾎﾟﾘｼｰ
利用ﾏﾆｭｱﾙ/ﾍﾙﾌﾟ/ｶﾞｲﾄﾞﾗｲﾝ
お問い合わせ
2024 肥前のﾎﾟﾁ
しおりを解除