コヨミフェイル
008
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いないだろう。
「八九寺」
影縫さん達が去ったことで戻ってきているであろうと踏んで八九寺の名を呼んだ。
「わかっています。ここでお別れですね。無駄でしょうけど、くれぐれも無茶だけはしないでくださいね、とだけ言わせてもらいます」
八九寺は戸口から顔を覗かせて言った。
「ああ。ありがとうな、飲んでくれて」
「青酸カリですか?」
「ここはいつ心中の現場になったんだ!」
「それより、阿良々木さん。青酸カリって精算(仮)みたいじゃないですか?」
「精算に(仮)も(株)もねえよ!!ここはシリアスパートじゃなかったのか?僕が間違っているのか?」
「う〜ん。確かに清算(仮)はなかったですね。ちっとも面白くも何ともないですね」
「そっちかよ!」
「ああ、阿良々木さん。気付いていると思いますが、阿良々木さんが間違っていないときなんてないので『僕が間違っているのか?』という質問は無視させてもらったのですよ」
「気付きたくねえ!」
僕は間違っていないはずだ!!
「お前のことを思って言ったんだぞ!」
親切心を返せ!
「『お前のことを揉むって言ったんだぞ!』って、阿良々木さんの変態加減の底が知れません!!」
確かに言われてみれば、似ていなくもないフレーズだが、公然で僕はそんなことは言わねえよ!……多分。
「ごめんなさい!今まで何度もみだりに胸を揉んでごめんなさい!!」
「うるさいっ!!」
忍の声だと思う間もなく僕の体は宙に舞っていた。今日三度目のアッパーを忍から有り難く顎に頂いていた。僕が八九寺と戯れ、もとい八九寺を説得している間にいつの間にか僕の下にいたらしい。アッパーで男子高校生を打ち上げるといい、さすが残り滓とは言っても元怪異最強。
「ぐふっ、かはっ」
受け身も取れないままに背中からアスファルトにしたたかに打ち付けられた。肺から空気を押し出されて、軽く呼吸困難に陥った。ダメージから見て、優に二メートルぐらい打ち上げられたようだ。顎も三度に渡る痛撃についに音を上げていた。しかし、幸いにも今は吸血鬼性が濃いので、既に痛みは消えていた。
「お前様はっ…………」
忍は音が聞こえてきそうなほどに歯を強く噛み締めて、肩を震わせていた。
かなり虫の居所が悪いのは間違いなさそうだ。
「儂をどれほど怒らせれば気が済むのじゃ。ものには限度があるということは聞いたことはないかのう?」
声が震えていてさらに言葉尻が疑問形なのが忍の怒りのパラメーターが振り切っているのをありありと示していた。だとしても、八九寺を真剣に説得しようとしていた僕に対してあまりにもひどい仕打ちじゃないか。
だが、そんな理不尽に今の忍には関係ないことだ。
忍の墳怒の一端を担った八九寺は素知らぬ顔で口笛を吹いていた。
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