コヨミフェイル
008
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ず苦笑いを浮かべる。
「僕はそれでもします。何もせずにいることなんて僕にはできませんから」
真っすぐ影縫さんの目を見つめた。
「好きにしぃ。止めへんわ」
例によって影縫さんは涼しげに言った。
「でも、お姉ちゃん―」
「ええねん」
影縫さんは斧乃木ちゃんの脳天に拳を振り下ろして黙らせた。
……さすが暴力陰陽師の名を欲しいがままにする人物。式神にも容赦ねえ。
心なしか斧乃木ちゃんの目が潤んで見えた。
「まあ、おどれらの好きにしぃ。精精頑張りぃや。ほなな」
影縫さんを肩にのせた斧乃木ちゃんは影縫さんをのせていないかのように軽やかに踵を返した。
「影縫さん!」
一歩を踏み出そうとした影縫さん、もとい斧乃木ちゃんを呼び止めたが、斧乃木ちゃんは僕の声など聞こえていなように歩を進めた。
しかし、影縫さんは聞き入れてくれたようで
「黄泉蛙」
と、だけ言い残して片手を上げてひらひらさせながらい教室を出ていった。影縫さんが口にした言葉が何を示しているかなんて考えるまでもなかった。
「忍――」
「わかっておる」
忍に声を掛けたが、二言目を口にする前に遮られた。
忍は僕の膝から下りて、教室の戸口に歩いていった。
忍には言葉が無くても伝わるらしい。これもペアリングのおかげだろうか。
思えば忍がいなければ、今まで僕はろくに戦えてなかっただろう。忍にはよく助けられていて自分の力だけで解決できたこと少ない。障り猫しかり、囲い火蜂しかり、しでの鳥しかりだ。
いや、僕が今までやってこれたのはこの並外れた身体能力おかげだろう。僕は忍にお世話にならなかったときはなかったということだ。
『儂はお前様の味方ではあっても、だからと言って決して人間の味方というわけではない』
『例えば、困っている人間がいるとするじゃろう。おそらくお前様はそやつを助ける。しかし、儂はそやつを助けはせん』
『人類を滅ぼしたりもせんが―人類を救いもせん』
忍はそんなルールを自分に課しているはずだったが、なし崩し的になくなっている。
というわけで今回も忍には付き合ってもらう。図々しいにもほどがあるが、僕の我儘に付き合ってもらうことにする――僕が忍の手を借りずに済む日まで。
しかし、八九寺はそうはいかない。
八九寺には危ない目には遭って欲しくない。八九寺が危ない目に遭うと想像しただけで胸が裂けるように痛くなる。勿論他の皆にも危ない目には遭わせたくない。しかし、八九寺は離れ離れになった母親に会おうとして事故に巻き込まれて浮遊霊となり、十一年間さ迷い続けたのだ。だから、八九寺をこれ以上の不幸に遭わせたくないという気持ちが際限無く沸き上がるのである。これも僕の我儘なのだろうけれど、この我が儘を押し通したとしても責める者は
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