コヨミフェイル
008
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うちは浅からん関係やん」
斧乃木ちゃんの肩の上で八九寺の消失を気にしている風もなく涼しげにミステリアスに影縫さんが言う。あの件はすっかり水に流してくれたのか、それとも根に持っているが、ただ表に出していないだけなのかわからなかった。
「ええ、まあ……」
「殴り合って生きとる相手はたいがい仲良おしとるから気にせんでええで」
僕の不安を察したのか、影縫さんはそう言ったが、安心させようとしているのがわかるのだが、内容が物騒で安心するどころかさらに不安にさせられる。まあ、悪い人ではないし、大丈夫だろう。
影縫さんは既に目の前にいて驚異的なバランス感覚で斧乃木の肩の上で膝を折って僕の目線の高さに合わせていた。
「はあ……」
「そーゆーことやさかい仲良おするついでに聞かせてほしいことがあんねんけど、何があったんけ?」
「一家が蒸発しました」
影縫さんが言い終える前に割り込むように言った。
「あなた方がいるということは、この町に怪異が、それも不死身の怪異がいるということなんですね」
僕の言葉に影縫さんは口を挟まず、目を細めていた。
「……全くその通りや。昨夜、うちの不手際で獲物逃がしてもてこの町に逃げ込まれてしもた。言葉もあらへん」
口元には自嘲の笑みが浮かべられていた。本当に屈辱だったのだろう。表には出さないが、そう思えた。
「いえ、責めているのではありません」
これは本心だった。
確かにてっきりただ不死身の怪異を追ってこの町にきたとばかり思っていた僕には実は影縫さんは逃がした怪異を追ってきたのだという事実は驚きに値するが、羽川に忍野メメが幾度となく返り討ちにされていると知っている僕に影縫さんを責める気にはなれなかった。忍野が時折見せるものと影縫と対峙したときに感じたものが似ていたからなのかもしれない。怪異のオーソリティが持つ独特の雰囲気だろうか。そう思うと、忍野のときのように影縫さんも失敗したことにある特殊な事情があるに違いないと思えたのだった。
「いやいや、これは完全にうちの落ち度や。責められへんゆう方が気持ち悪いわ。蒸発したんはおどれの身内やろ」
「そうですけど、いや、だからこそなおさら責めません」
と、僕が言うとわかっていたのか変わらず涼しいそうな顔をしていた。
「ゆうようになったやないけ、鬼畜なお兄やん」
「それほどでもないですよ。それよりも、影縫さん、状況が状況です」
「みたいやな。人が蒸発してもうたのはどお考えても、うちの逃がした怪異が関わっとるちゅうことやろ」
「はい。いきさつを話させてもらいますと――」
僕は現状をなけなしの国語力を総動員して説明した。誤解なく伝わったかはわからなかったが、説明はおおよそ五分で済んだ。これが忍野に世話になる度にいきさつを話してい
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