コヨミフェイル
008
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き忌むべき詐欺師によって二人の耳に月火が不死身の怪異、しでの鳥であると知られて月火を退治されかけたが、どうにかこうにかして死闘の末に思い止まらせたという因縁がある。
確かそのときも影縫さんは斧乃木ちゃんの肩にのっていた。影縫さんは外見からでは太っているように見えないのだけれど、少女の肩の上に影縫さんほどの大人の女性がのっているのは目立つ。
目立ちすぎる。
逆でもそれなりに目立つと思う。
しかし、どうしてか警察に職務質問をされないらしい。いや、毎回撒いている――と、考えるのは突飛過ぎるか。
まあ、専門家だからその事態に対する策は講じているのだろう。
そんな専門家を肩にのせた斧乃木ちゃんは忍を挑発して涙目になるほどボコボコにされた経緯があるのだが、相変わらず無表情を決め込んでいる。
清々しいほどに無表情である。まるで、そんなことはなかったような表情である――無表情だけど。
忍はというと、僕の隣で胸の前で腕を組んで仁王立ちしている。
威張っているようなのだが、そのあまりにも愛らしい矮躯が台なしにしているどころか、どこか健気で愛らしさを引き立たせていた。
八九寺はというといつの間にかいなくなっていた。二人が加入して文殊の知恵作戦が実践できないと見限ったのだろうか。薄情な奴だ。
「中らずと謂えども遠からずっというところです、影縫さん」
と、浅くお辞儀をした。
「ここで話すのも何ですから、場所を移しませんか」
公共の場で怪異の話しをすることが憚れることもあるが、話が少し長くなると直感したための提案だった。影縫さんには快く受け入れてくれたようだった。
「そうやな。なら叡光塾にせえへんか」
という要望で、僕と忍、影縫さんに斧乃木ちゃんはあの例の廃墟に移動することとなった。
場所はミミズク鳥くんの家の前から移り、例の廃墟の四階の教室、忍野が寝泊まりしていた教室、そして僕と影縫さんが(というか、ほとんど影縫さんが)暴れて床に大穴が出来ている教室である。
職質の対策を講じているにしても、やじ馬とか警察がいるところで童女の肩の上に乗っているお姉さんと話す度胸がなかったので人目につかないこの場所を指定されてホッとするばかりである。
ここは因縁の場所とも言うことができるが、もともと僕はそれを慮って別の教室に入ろうとしたが、影縫さんの要望でこの教室で話すことになったのである。
「お久しぶりです、影縫さん」
挨拶の言葉を口にしていないことに気がついて改めてお辞儀をして言った。
僕は教室に散乱している椅子の一つを取ってきて忍を膝に載せて座っていた。影縫さんに椅子を勧めたが、やんわりと断られて、代わりに斧乃木ちゃんを座らせた。
「そないに畏まらんでええよ。水臭いわ。おどれと
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