暁 〜小説投稿サイト〜
闇物語
コヨミフェイル
007
[14/17]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
きに僕は取り乱して何もできないどころか足を引っ張るという事態が生じ兼ねないだろ?」
 「はっ。それは跡付けの理由じゃろう、どーせの」
 ちっ、さすがに見抜きやがるか。
 「差し詰め儂が、極秘ルートからミスタードーナツが全品半額セールを行っているという情報を入手していることを既に今朝から感づいておるのじゃろう?じゃから儂がそれを条件としてお前様に力を貸すとでも思っておるのじゃろうが、それは大きなミステークじゃ」
 お前様も今度連れていってくれると言ってくれたしのう。
 と、ミスタードーナツに思いをはせているのか、口の端からよだれが垂れていた。鈴の音を聞かせてから餌を与えていると、鈴の音だけでよだれを出すようになるという条件反射の実験の実験体になった犬を彷彿とさせるな。バカっぽい。
 「その情報は今朝の新聞に挟んであったチラシからの情報だろうが」
 「そうかもしれんのう」
 「そうしかねえんだよ。……で、ミスタードーナツを要求しないのなら、何を要求するつまりなんだ」
 悪い予感しかしないが、一応聞いてやるか。主人としての当然の義務だしな。
 「……そう急かすな。ことが済んでから教えてやるわい」
 …………凄く怪しい。
 金欠の僕に何を要求するつもりなんだ?
 なんとかくんの一家が蒸発したことよりもよっぽど忍の要求の方が気になる。
 百倍気になる。
 だが、ここで忍の機嫌を損ねることは最も避けなければならないから、しょうがない。
 「わかった。怪異を探ってくれないか、忍」
 「かかっ。人間ごときに従うのは甚だ不本意じゃが我が主様の命令じゃからのう、仕方ないのう」
 さして機嫌を損ねた風もなく忍は鼻を突き上げるように顔を上げて目をつぶると、鼻をひくつかせた。
 「う………………ん……………………わからんのう」
 しばらくその姿勢のまま、首を回して四方を探るように鼻をひきつかせた末に悩ましそうに忍は呟いた。
 「……どういうことだ、忍?」
 「この姿になってから怪異を探したことも、しようとも思わなかったからのう。確かに怪異の残り香はあるにはあるのじゃが、この事件の犯人が怪異だったとしても、その残り香がこの件の犯人なのかは判断できんのう。なんせこの町が、というよりかは我が主様が沢山の怪異を引き寄せておるからのう。一つずつ追っていってもいいが、日が暮れてしまうぞ」
 つまり、比較対象がないために混ざり合っている様々な残り香の中に別の新たな臭いが混ざっていてもわからないということだろう。忍の要求は一先ずお預けということには少し胸を撫で下ろしたくなったが、しなかった。する気分にはなれなかった。
 「これで振り出しに戻りましたね」
 八九寺の言う通りだった。
 これで完全に八方塞がりだ。
 こういうことなら火憐みたいに走り回
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ