赤の少女が求めしモノは
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彼女達のようなモノは違う、違うのだ。高い武力を持っているモノ達の力が最大限に出るのは……“死に物狂いでナニカを守る時”。
守る何かは、自分の矜持か、夢か、愛する他者か……様々ある。彼女の指標は、戦い続ける事に歓びを……きっとそうなんだろう。
正々堂々……汚く醜い戦場でそれを貫くから指標になって、人々が憧れる。彼女達は綺麗じゃなくちゃならない。汚れた道になど、憧れるモノは居ないのだから。
――あたしはそんなモノより結果と効率が欲しいけど。
「あーもう、めんどなってきたっ」
聞き出そうとしていたのに逆に掻き乱されたからか、ガシガシと頭を掻いた張遼は、頬を両手で一叩き。後に、すっきりとした眼差しで見てきた。
「つまりや、やり方が汚くて線引きも簡単に越えよるけど、今のあんたぁはウチらとなんも変わらんっちゅうこっちゃな」
「はぁ? 何処をどう取ればそうなるわけ?」
全く意味が分からない。結論が破綻しすぎだ。
いじわるく笑みを深めた張遼は、偃月刀を拾って立ち上がった。
「まだ教えてやらへん。ただな、此れだけは言うたろ」
てくてくと扉に向かって歩く姿は楽しげで、振り向いた表情は……思い遣るような優しいモノ。
「あんた、自分で思うとるよりも案外甘い人間になりよるで」
あたしが? あんた達を崩壊させる為に来たこのあたしが甘い?
お喋りが過ぎただけだ。いらいらする。胸がむかむかする。
睨みつけると……にへら、と笑い返された。
「今日の夜には桂花も着くで。大切なもん助けたいんやったら……嘘つきなや」
「……言われなくても」
気持ちを落ち着けて、舌を出して送り出した。ひらひらと手を振ってから扉を閉める彼女は、もう心を読みやすい人では無く、一介の将。
どうやら此方のしたい事はバレているらしい。その上であたし達の策に乗る、という意思表示だろう。
あたしが嘘をつけば、袁家は勝てる。
あたしが裏切れば、袁家を滅ぼせる。
どちらでも夕が助かる道。優しい優しい曹操軍は、桂花の為に夕を助けてくれるだろうから。けど、夕が望んでるのは……たった一つ。
選ぶのはあたし? 違う、夕だ。あたしは夕の為だけに生きてるんだから。空っぽでいいよ。ずっとこのままがいい。
――あの人とならどんな会話になっただろ。
「あーあ、秋兄に……会いたいなぁ……」
せめて先に彼に向けて、助けたいって話したかった。
自分と同類なあの人と話せたら、こんなにイライラしないで済んだのかな?
†
「――――そんなわけでだ、俺はいつもえーりんに頭が上がらん。殴られるからな」
「あんたがバカな事ばっかり思いつくからでしょ!」
「いてっ!」
べし…
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