赤の少女が求めしモノは
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は、事実を受け止めて前を向ける出来た人間。苦しんでもがいて悩んで……でも絶望に折れなかった人。
――いいなぁ……
あたしはやっぱりこいつらが羨ましい。
大きく息を付いて冷静になろうとする張遼は、またあたしの瞳を覗き込んで言葉を紡いでいく。
「華雄はな、意地張って自分のやりたい事遣り切った。結果がどうであれ、あいつは戦い切った。譲れへんもんの為に……な」
「だからあたしにも譲れないモノがあるかどうか聞きたいわけ? 自己満足だね」
「それでええねん。ウチが聞いておきたいだけやから」
「挑発なんて戦の常套手段じゃん? あんたらは引っかかってバカを見た、あたしは引っ掛けて得をした。それでよくない?」
「……っ……そりゃ、そうやけど……」
言い淀む彼女は眉根を寄せ、ぐ……と拳を握った。
突ける所はいくらでもあるけど……。
――いらいらする。羨ましい。ちょっとだけ……八つ当たりしてやろうか。
目を細めて頬を吊り上げる。並べる言葉は、彼女の苛立ちを煽るモノ。
「あはっ……どんな言葉が欲しい?」
「……」
「あたしは一人の為に戦ってる。華雄も一人の為に戦った。違いは無いから許せる、それで満足?」
「……っ」
「あんたらは誇り誇りってうるさいけど、死んだらただの肉袋。守りたいモノ守れなかったら……ひひっ、なんなんだろうね?」
「……お前、は……」
震える拳、ギラリと光る眼差し。ひしひしと怒りの気が伝わってくる。憎しみを再燃させるのは容易い。人に嫌われるのは簡単だ。
十分だ。少しだけすっきりした。
でも……と思う。大きな不和を齎すのはよろしくない。何より、案外聡いこの女には、本心を言った方が此れからの為にいい。
――いや違う。自分に嘘をつくのはなんかヤダ。あたしが言ってやりたいだけ。秋兄のせいだ、まったく。
「無駄死になんて言わないよ」
「……へ?」
「あんたみたいな人が友達に居たってだけで華雄も幸せでしょ。好きなように生きて、好きなように死ぬ。華雄もそれしただけじゃん。命投げ捨てて結構、最高、ひゃっはーだよ。自分を持ってるあんた達はそうして楽しんで生き抜けばいい」
面喰っている張遼の瞳を見据えて、べーっと舌を出した。
猪々子とか夏候惇みたいな華雄なら、こいつにそうして欲しいと願うだろうから、伝えてみたいだけ。
自分とは違うから、伝えてみたいだけ。
「あたしはね、華雄の想いを否定してない」
「……わけ分からんのやけど」
「想いの為にって考えは好きってこと。華雄は誰かを想って、許せなくて、自分を貫き通したわけじゃん。そんで死ぬ事で想いを託した。死んであんたの胸に想いを残した。
だからまだ戦ってるんでしょ? 董卓が作りたかった世界を見る為に。それも
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