赤の少女が求めしモノは
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にあるのは、殺意では無く敵意。でもやっぱり憎しみは無かった。
「ああ、せやな。シ水関でのことよう覚えてんで。忘れたくても忘れられへんわ」
「へぇ……華雄みたいに忠義に殉じれなかった奴がよく言うねー」
煽ってみても、にやりと不敵な笑みが帰ってくるだけ。澱みが晴れているってのは想定外だ。徐州ではまだ憎しみが先行してたっていうのにさ。こちとらやりようは幾らでもあるけど。
「はっ、ウチは華雄とちゃうからな。好きなように戦って、好きなように生き抜いて、好きなように死ぬ。結果としてやけど、戦場で神速のままバカ共と死んでも楽しいし、乱世が終わったらどっか旅にでも出てのたれ死んでも楽しい。ウチがウチとして楽しんで生き抜く事が一番の忠義や」
掴み処の無い発言。雇われの客将みたいな奴だ。これが曹操軍で上手くやっているのは不思議で仕方ない。
いや、それより変な点がある。
「死ぬの前提なんだ?」
「ん? 人はいつか死ぬやろ。たった一回こっきりの人生、楽しめへんだら損やっちゅうねん」
「じゃあ曹操のとこで戦ってるのは楽しいっての?」
「そりゃなぁ。強い敵と戦えるってのはウチにとって何より楽しい事やで。全力で、この身この心この命、主の為も自分の為もぜんっぶ賭けて戦ってる時ってなぁ……めっちゃ気持ちええもん」
恍惚とした表情は、きっと夏候惇との一騎打ちを思い出してだろう。
なるほど。武人らしい答えだ。さっぱりとしていて分かり易い。
自分の力を最大限に出せる瞬間は命のやり取りの場で間違いない。兵士達が命を最も輝かせて生きている事を実感するのと同じ。生死を賭けた戦いは心が躍るモノなのだろう。
誰かを守る為、その想いすら付加分の力となる。たまにいるのだ、こういう部類の人間は。
楽しい事を求めるのは人として正しいから否定はしない。
真っ直ぐにそう言えるからこそ彼女は武人で、その輝きを喰らいたい側のあたしは武人では無い。
戦場だけでなく、今生きているこの時をも大切にして、人の生き死ににも拘り過ぎない。誰かの為に戦う事も出来るし、自分の欲の為に戦う事も出来る……そんな張遼はあたしや秋兄とは全く違うイキモノだ。
「ふーん、あたしが人殺すのを気持ちよく感じるのと似てるのかな」
似ているとすればこれか。
未だ赤い血を浴びると興奮するし、湯気の上がる臓物なんか堪らなくなる。絶望の表情も断末魔の雄叫びも、あたしにとってはやっぱり心地いいモノなのだから。
けど、最近は少しだけ気持ちよさが薄くなった。秋兄のせいだ、まったくもう。
「うへ、趣味わる……。ちゃうちゃう。あれやで、こう……真っ白になって、他の事なんもかんもどうでもよくなって、ああ、ウチ生きてんねんなぁって実感できるんや」
「んー……じゃあ夕といち
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