赤の少女が求めしモノは
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ほら、私が華琳様の素晴らしさを説いて行けば自然と奴も――」
「……よく分かった。桂花が着くまで部屋で待とうな」
つまりは無計画。会って話せばどうにかなるだろうというごり押し。春蘭らしいと言えばらしいが、相手がそんな単純なわけが無く。
ぽんぽんと二回肩を叩いてから、片手で無理やり春蘭の身体を回転させた。
「わ、私だってなぁ、戦うだけじゃないんだぞ!?」
「ああ、そうだな」
姉に向けるのは生暖かい眼差し。まるで子供を見るようなモノ。
ショックを受けた春蘭は為されるがまま、怪我をしている秋蘭を無理やり振りほどく事も出来ず。
「う……そんな目で見るなぁーっ!」
押されても逆らう事はせずに廊下を引き返して行く。
戦場では絶対に上げない可愛らしくも情けない叫びを上げて。
†
目が覚めて三日になる。
あたしの行動は縛られる事無く、捕虜としては有り得ない厚待遇で軟禁されていた。
不満があるとすれば秋兄に会いたかったけど会わせてくれないことくらい。
ただ、昨日から目を光らせるモノが……一人。
神速との呼び声高き張文遠。武器を傍らに、日中はあたしの部屋で居座っている。
陽動を込めた巡回から昨日帰ってきて、あたしが捕まったと聞いたから此処に来た、のだろう。
喋る事は無く、挨拶する事も無く、ただただ無言で其処に居るだけ。
あたしから張遼に話す事なんか無かったから、ずっと無言で居てやった。軽い調子で話し掛けて何か勘ぐられるのも嫌だから。
部屋の入り口、張遼は椅子を傾けて船を漕いでばかり。手洗いに立つと部屋の外に出て、着いては来ない。戻ってくるとまた部屋に入るだけ。兵士がそこら中で見張ってるから下手な行動は出来るわけも無いけど、さすがに何がしたいのか分からない。
窓の外を眺める時間にも正直飽きてきた。何も言わないなら……探りを入れてみるか。
「……ねぇ」
「お、やっと話しよったか」
首を向けて言うと、彼女は椅子を落ち着け、膝に両肘をついて前掲姿勢でこっちを見た。
どうやらあたしから口を開くのを待ってたらしい。
「……待ってたわけ?」
「いやぁ……ウチ入ってもなぁんも言わへんだから、それならウチもって思うてな。ずるずる引き摺って二日目や」
にしし、と口に手を当てた彼女は、猫みたいな笑顔だった。たかだか話すだけに悪戯をしていたわけだ。
それより、声にも瞳にも、憎しみが全く無い。シ水関での挑発の事、堪えて無いんだろうか。秋兄は変な人だから打ち解けるのも分かるけど……さすがに袁家のあたし相手にソレは無くない?
「華雄のこと……」
自分から口に出してみると、ピクリと彼女の身体が僅かに跳ねた。
少しだけ細められた目
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