赤の少女が求めしモノは
[4/29]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
きていたいのだろうよ。その大切なモノに変わってほしいと願われて自分が出てきたに違いない。だから……杞憂だ。曖昧な状態なら余計に大切なモノに縋るから、田豊の生存を揺るがすような行動はしないと思うぞ?」
生きている限り変化は必然だというのに……と心の中で一人ごちる。
他人の言うままに生きる人形のような人生。他人の救いの為に生きる己の無い生き様。
――自分が輪の中に入っていないのなら、誰かの為に、とは呪いと同じだ。
似たような生き方をしている秋斗を見ていればよく分かる。
――舞台で蠢く道化師のように踊って、廻って、笑って……誰かの笑顔が見たいから生き、戦い続ける。其処に自分の願いはあるのか否か。あいつらはそれでいいと言うだろうが……お前達を想うモノ達はどうなる……。
他人の幸せが自分の幸せ……そんな生き方をしていて楽しいか。秋蘭は自分との違いをはっきりと認識した。出来る限り華琳と共に生きていたい自分は、やはり二人のようにはなれないのだと。
二人の生き方を否定はしないが肯定も出来ない。秋蘭は想いを向ける側。彼らのような輩に、救われて欲しいと願う側だから。
「むぅ……それでも、だ。ブレたままで戦場に立たせるわけには行かん」
そんな秋蘭の思考は知らぬまま、春蘭は単純に、曹操軍のこれからを話した。その為に明の軟禁されている部屋に向かっているのだと言わんばかり。
春蘭は明が仲間になるのは確定としていたのだと気付いて、秋蘭はくつくつと喉を鳴らす。
部屋までは後少し。華琳は秋斗が会う事を禁じただけで、秋蘭と春蘭には何も言っていない。
二人が話す事もしていいだろう……が、
「霞に任せてもいいと思うぞ?」
目を細めて、優しく諭す。
自分達が動いているならば、神速は既に動いているだろう。そう、予想して。
「霞に?」
「うむ。桂花の到着は今日の予定なのだから、本格的にコトを起こす前に霞も何かしら動くはずだ。ほら、シ水関での事があるだろう?」
「華雄の事、か。あいつの澱みは晴れているはずだが?」
「澱みはもう無いだろう。しかし……聞いておきたい事や、言っておきたい事もあるだろうさ」
そういうモノか、と春蘭は難しい顔で腕を組む。
春蘭も華琳の為にイロイロと話しておきたい……そんな心が透けて見えて、秋蘭はさらに優しい笑みを深めた。
「今回は引いてやってはどうだ? というか、姉者は張コウと会って何を話すつもりだったんだ?」
キョトン、と目をまぁるくした春蘭は、しばし沈黙して瞼をぱちくり。
――ああ、姉者は可愛いなぁ……。
その愛らしい仕草に、秋蘭は内心で蕩け始める。
幾分、慌てたように言葉を紡ぐ。口を開いたのはもちろん……春蘭。
「そ、それは……
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ