赤の少女が求めしモノは
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、ため息を一つ落とした。
明が何かコトを起こすとは思っていない。効率、という面を鑑みれば此処でリスクを伴う動きをする意味が無く、大切なモノすら失わせるのだから。
「……姉者は刃を交えてみて何か感じたのか?」
相手が歴戦の武人で自身の在り方に誇りを持っているモノであったなら、春蘭も此処まで不機嫌にはならない。
不機嫌になるのは何かを読み取ったが故にだろう、と秋蘭は思う。
剣には想いが乗る。力の強さは筋力だけで測れない。相手の表情から読み取れる内面も……緊迫した場で透けたりもする。
秋蘭は弓であるが故にそういった直感的で感覚的な読み取り方は出来ない為に尋ねてみたのだ。
むすっと尖らせた唇を、春蘭はさらに尖らせて眉間の皺を深めた。
「……張コウは徐晃と同じで剣が“軽い”」
重量や筋力の意味では無く、とは言わずとも伝わる。剣を振る理由の問題であろう、と。
秋蘭は黙って続きを待った。
「徐晃は黄巾の時よりも動きはいいが……あの時より“重さ”が足りん。だから私や霞に一度も勝てんのだ。まあ、記憶を失っているから仕方ないかもしれんが」
「だが張コウには戦うに足る理由があるぞ?」
剣を振る理由が一人の為だ。必然、春蘭の言う“重さ”が出ても不思議では無いと秋蘭は思ったが、春蘭は小さく首を振って否定を示す。
「あいつを武人では無いと言っていたな? 確かに武人では無い。アレは……本来空っぽなんだ」
「空っぽ?」
言葉足らずな表現に首を捻るも答えが出ない。厳しい目つきで、じ……と春蘭が目を合わせてきた。
「胸に抱く想いは確かに妄執の類だろう。芯が無い、自分が居ない、あいつ自身がただの剣と変わらん。しかし……ブレが出ている、負ける瞬間に余計ブレた。そんなモノを、どうして自由にしておける?」
ああそうか、と秋蘭は納得がいった。春蘭が警戒しているのは、心が乱れていて何をしでかすか分からないと訝しんでいるからであった。
――徐州での戦後に霞が何も言わなかったあたり、今回の戦の前後で何かが変わっているのか。そういえば……挑発には乗らない奴なのに私の言葉で苛立っていたな。
思い出してみれば、違和感はあった。
いくら挑発しても飄々としていそうな彼女が、自分との一騎打ちでブレた瞬間があった。
――あの時私は、何を言ってやったのだったか……
歩きながら思考を廻すと、言い放った言葉を思い出せた。
『世界は変わらんさ。自分が変わろうとしない限り。お前の大切なモノも、変わってくれと願っているのではないか?』
確かに秋蘭はそう言った。
他愛ない一言。挑発でもなんでもない会話で明は心を乱されていたと思い出す。
「姉者……あやつはあのまま、大切なモノの為だけに生
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