赤の少女が求めしモノは
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れれば僥倖で、誰かしら一人でも多くがが助かるように。
「んなことは起こらん。紅揚羽は蜘蛛の巣に絡みとられちまった。もう寸分たりとも逃げられねーさ」
しかし秋斗の返答は否であった。
「じゃあ何よ?」
「今日の夜に分かる」
「教えてくれたっていいじゃな――――」
「あ! 兄ちゃーん!」
むっとした詠が詰め寄ろうとしても、悪い時機で元気な声が掛かってしまい途切れた。
駆けてくる桃色の髪に小さな身体。満面の笑顔での突進突撃に身構えること無く……寸前の所、ききーっと急ブレーキを掛けて季衣は止まった。
「どうだった?」
「言われた通りに親衛隊の皆に伝えてきたよ! 了解、だってさ!」
「うし、よくやった。ありがとな」
自然な動作で、さもそうするのが当然であるかのように彼はグシグシと彼女の頭を撫でやった。
「子ども扱いしないでってば!」
「おお、すまん。くせだ、許せ」
「ふーんだ。ボクは大人だから許してあげる。そんなに頭撫でたいなら、ちょっとくらい続けてもいいよ?」
腰に手を当てて胸を張る仕草は愛らしく、何処が大人だと突っ込みたくなるも、さすがに言わない。
そんな二人を見ながら、詠が訝しげに秋斗を見上げる。
「……またなんか企んでるの?」
自分の与り知らない事がどんどんと進んでいる。彼が齎す不可測は、やはり読み取れなかった。
撫でられるのが心地いいのか、目を細める季衣をそのまま、詠の視線を彼は横目で受け止める。
「ああ、親衛隊の証をしっかり心に刻んどけって伝えて貰っただけだ」
「……」
やはり彼は教えてくれず、詠はむすっと頬を膨らませて顔を俯けた。
「兄ちゃんダメだよ? えーりんを悲しませちゃあさ」
「んー……でもなぁ」
「べ、別にいいわよっ!」
若干、少しだけだが声が震えていた。気恥ずかしさからか、悲哀からか、詠には分からなかった。
ちら、と季衣を見やって、秋斗はため息を吐いた。
「許緒。荀ケ殿は到着したか?」
「ふえ? まだだけど……」
「なら到着するまでに真桜のとこ行って最後の確認して来たらいい。次の戦いはお前達の働きに掛かってるから、念入りにな」
季衣に聞かれたくない話なのだと直ぐ分かる。
わざわざ隠すという事は……親衛隊関連で何かを企んでいるのだ。その程度詠も読める。繋がる先は何処か。この後の戦を思い描いて……詠は答えのカタチが見え始める。
「もう五回も確認したのに?」
「経路確認と地図の見直しは大事だ。結構めんどくさい作りにしちまったから」
「間違っても流琉が居てくれるから大丈夫だって」
「先導して貰う側と先導する側、どっちの方がかっこいい?」
「う……なんか流琉も春蘭様と一緒に戦って変わってた
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