赤の少女が求めしモノは
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…と肩を思いっ切り叩かれた秋斗。ソレを見ていた張コウ隊の兵士達は呆れを含みつつ、笑う。
「ぎゃはははっ! バカだろあんた!」
「くくっ、バカ過ぎ。こりゃ尻に敷かれる部類だな」
「言ってる側からまた殴られてやんの!」
捕まっている時間を持て余していた張コウ隊は、今日の朝にふらりと訪れた秋斗とこうして他愛ない話を繰り返していた。
初めは警戒していた。恐れても居た。
友の地を奪われた黒麒麟がわざわざ出向いたのだ。袁家が行った侵略は彼らも分かっている。何かしら苛立ちをぶつけられるのでは、と思うのは必然であろう。
しかし彼は普通にバカ話をするだけで、なんら幽州の事には触れなかった。
余りに異質。捕虜に対して、それも一介の兵士達に対して気さくに話し掛けるモノなど、誰が考えられようか。
通り過ぎる曹操軍の兵士達は訝しげな視線を向けるも、別段何も言わずに去って行くだけ。
敵とは憎むモノである。秋斗に不信感を抱くモノも少なからずいるだろう。だというのにこうして話す彼の狙いは、探しに来た詠でも読む事は出来ない。
じとり……と目を向ける詠。バカ話に巻き込まれたわけだが、そろそろ行くぞと伝えている。
彼は目を泳がせつつため息を一つ。
「そろそろ行かないとダメみたいだ……が、最後にお前さんらに一つ言っておきたい」
瞬間、兵士達の顔に緊張が走る。
真剣な表情は何を言いたいのか。ただで話をしに来るわけがないか、と落胆の視線もちらほらと。
「張コウだけど……拷問とかしてないから安心しとけ。そんなもんするつもりも無い」
よっと、と声を出して柵から降りた秋斗は詠の隣に並ぶ。
茫然と、歩き始めた彼の背中を見つめる張コウ隊。ひらひらと振られる掌が一つ。
「あいつの望み、叶えてやろうぜ」
何を言っているんだろうというような幾多の視線を背に受けながら、ゆっくり、ゆっくりとその場を離れて行った。
歩きながら彼の方を向き……詠は眉を顰めて睨みつける。
「あんた……何考えてんの?」
「……一番起こる可能性が高い事」
答えになってない返答に、もやもやと苛立ちが募る。
自分達の考えている戦絵図はある。張コウをどのようにして裏切らせるかも、予想は立っている。それでも彼がわざわざ手を打つというのは、詠達軍師の予定にはないモノ。
巡る思考は曖昧にぼかされて繋がらない。彼の考えが読めないのが、ただ悔しい。
「張コウと張コウ隊がこっちの予定に反して裏切った場合……ってこと?」
あるとすれば、裏切ったとみせかけた明が張コウ隊を引き連れて再び袁家側に着く事。華琳が明の心を叩き折れなかった場合はそうなる。
予防線を張ったのではないか、と詠は判断した。小石程度の安全策。少しでも迷ってく
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