赤の少女が求めしモノは
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い王佐が己の元に帰還する時を。
――想定外は張コウが黒麒麟と真名を交換していた事か。それがどういう風に転ぶか分からない以上、今の徐晃と会わせるわけには行かない。
まだ秋斗と明は一言も話していない。記憶が戻るなら賭けてみたいが、華琳としてはそれよりも戦が最優先。秋斗の方もよく分かっている為か何も言って来なかった。
頭を悩ませている問題、その原因に目を向けて、華琳は大きくため息を吐いた。
下では黒い衣服の男が兵と楽しそうに歓談していた。通常であれば違和感を感じるモノは少ない――
「張コウ隊と仲良くなって来る、とか言い出したけれど……仲良くなって何がしたいの? あなたは」
男の相手が鎧を脱いで武器を置いた敵の部隊でなければ。
相変わらずわけの分からない行動をする、と内心で呆れても、華琳はその光景を微笑みながらのんびりと眺め続けた。
どっと笑いが起こる。からからと笑う声が聴こえた。
殺し合っていたモノ達とは思えぬ程、彼らは平穏に包まれていた。
†
官渡の要塞には城がある。
元より放棄された廃城に手を加えたモノなので当然ではあるのだが、連合が終わって直ぐに真桜の工作兵達を投入したからかその様相は簡素であっても整えられていた。
昼下がり、小奇麗に仕上げられている城内の廊下を、覇王の武の両腕が並んで歩んでいた。
「華琳様は何故あいつを牢屋に入れんのだ。アレは暗殺が本業だというのに」
「まあ、そう言うな姉者。見張りの兵に黒麒麟の嘶き……二つがあればあいつが容易に暗殺に動くことは出来んよ」
官渡での戦闘が終わり捕虜の数は総勢で四千に上る。その内の一人、紅揚羽と謳われる武人を、華琳は牢に入れもせずに一部屋に軟禁しただけ。
不満を漏らす春蘭は顔を歪め、不快を抑えることもない。
元々の気質が一本気な所があり……さらには、華琳が前々から暗殺を跳ね除け続けている事からも、そういった輩を嫌っているのも一つ。
「そうは言うがな……」
「其処まで警戒するのはあいつの武力が徐晃並に高いからか?」
明の武の腕は春蘭も認めている。
そこらの一介の将程度では届き得ぬ逸脱した力だ。春蘭を始め、秋蘭、霞、秋斗の四人は魏の将の中でも飛び抜けているのだが、明の武力はその四人とほぼ同等と言っても良かった。
「それもある……が、アレのことは信用も信頼も出来ん」
敵として戦った以上、即座に用いるなどまず有り得ない。初めて会った時にすぐ胸襟を開くモノなど居ないだろう。しかし春蘭のはそういった常識的な感覚でモノを言っているのではないらしい。
――ふむ……状況が揃っているから下手な動きはしない、と言ってもダメなのだろう。
春蘭の内心を聡く読み取った秋蘭は
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