抉りて殺せ (1)
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........金蔵?」
以前より相当老け込んでいるが、そいつはやはり金蔵だった。
俺の今の姿に驚いたのか、目を丸くして右腕があった部分を指差す。
「ああ、これか。気にするな。どうってことはない」
「もしや...とは思ったがお主、体が」
「そうだな。成長は止まっている。年齢は、お前と変わらんのにな。......そんな顔をするな。ほら、そこのお嬢ちゃんは娘さんだろう? 紹介してくれよ」
部屋の隅に隠れてこちらを盗み見ている少女を指差す。金蔵もそれで気付いたようで、恥ずかしがる少女を引っ張り出した。
「初めまして、ベアトリーチェ」
「どうして私の名前を知っているの!?」
「さあ? どうしてだろうね。...ああ。やはり、君は彼女によく似ている。その金色の髪も、蒼い瞳も」
「?」
「お主...」
金蔵とベアトリーチェの困惑する顔もよく似ていた。
その出会いから数年後、ベアトリーチェが死んだと知らせが入った。崖から足を滑らせて転落死したらしい。知らせは、源次からのものだった。まだ若かったのに、残念だ。
俺から金蔵を慰めてやってほしいと頼まれたが、断った。
二重に愛していた存在を失ったのだ。俺から掛けてやれる言葉は無い。
それから更に15、6年後。俺は、六軒島にいた。
どこで知り得たのか、俺宛てに届けられた手紙には“招待状”と称してあり、『是非ともお越し頂きたい』とのことだった。
綺麗な薔薇庭園を目に焼き付け、初めて訪れる右代宮家本邸へと足を運んだ。
扉を開けた先には、西洋風の内装が広がっていた。
天井の照明も、赤い絨毯も、階段などの細かい装飾まで。
「お待ち申し上げておりました」
声を掛けられるまで気付かなかったが、すぐ傍には源次が頭を下げて待っていた。それに返答し、許しを出すとようやく顔を上げた。
「上の書斎にて御館様がお待ちです。御案内致します」
「ん」
名ばかりの本邸ではなかったらしい。
細部まで行き届いた清掃。それを行う使用人たちの身奇麗さ、作業、作法、言葉遣いまで。徹底されたものだと分かる。
その使用人の中に極めて小柄の少女がいた。
源次が懐から鍵を取り出す。
鍵穴に挿し込み、ガチャンという音と共に鍵が解けた。
「御館様。お客様をお連れ致しました」
「うむ。ご苦労であったな、源次」
なんか、更に老けたな。まあ、年齢も年齢だしな。
昔より痩けた頬。筋肉質だった腕や足も、今や骨と皮。すっかり老人になっていた。
金蔵はニヤリと笑う。“お前の言いたいことは分かっているぞ”とでも言いたげな眼差しに、こちらもニヤ
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