二十八話 白夜side
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白夜side
「…」
少女はなすすべもなく道に突っ立っていた。
――狂夜の強さはよく知っている、
――ただ、だからこそ危険なのだ。
狂夜が人類最強と言うのなら、裕海は人類を越している。
…『裕海』は、それこそ『強さ』そのものなのだから…
ぐぅ〜と白夜のお腹が鳴った。
こんなときでも人間は、空腹でお腹が鳴るのだと白夜は、苦笑してやがて、
泣き崩れる。
狂夜は、アゲハ達の所に送ってくれなかった。
よほど取り乱していたのか、神那が死んでいた場所にそのまま送られた。
白夜の中で孤独が生じる。
狂夜は、生きて帰ってくるかわからない。
その思いが余計に白夜の不安を大きなものとする。
悲しさ、苦しさからか「うっ…」と白夜は嗚咽を漏らした。
そのとき誰かに声をかけられた気がした。
「大丈夫?」とたった一言だけだったが、どこか安心できる声音だった。
その声は、少女の声だった。
その声は、何処かで聞いたことがあった。
顔をあげてその少女を見た。
その少女は、アゲハ蝶のように可憐で過ぎた一夏のように懐かしかった。
「アゲ…ハ?」
「…?ごめんなさい、私達、何処かで会いしましたか?」
白夜が名前を呼んでも、アゲハは白夜の事など覚えていない。
白夜が覚えていても、アゲハは忘れている、否、忘れさせられた。
しかし白夜は、『アゲハの記憶は。今直せるものでは無い』と思い、
「狂夜を助けて欲しい。」と狂夜の救助を優先させるように言った。
「狂夜!?まさか…あいつ、神那さんの仇討ちを!?」
アゲハは、声を荒げて驚く。
その時、アゲハの後ろからもう一人の少女が現れて言った。
「…やっぱり行ったのか…」
アゲハは、振り返ってその少女に泣きつく。
少女は、アゲハの頭を撫でて白夜に言った。
「君はアゲハと同じ…オーダーに使われていた人間かな?」
白夜は、涙が溢れる目を指で擦り、無言で頷く
アゲハは、合点のいったように白夜に向けて目線を送る。
『この娘は、私と同じく利用されていたから私を知っているのか』とでも思っているのだろう。
「お前ら、狂夜を知らないか?」
いつの間にか白夜の後ろに青いツナギを着た男が立っていた。
「阿部さん?それが…神那さんの敵討ちに…」
アゲハがその男に返事を返した。
阿部さんと呼ばれた男は、一人男を背負っていた。
「やはりか。じゃあ向かうぞ。」
阿部の他にもう二人女性が立っていた。
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