第一話
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昔に戻りたい。
誰もが一度は思うのではないのだろうか?
自分もその例に漏れずに、一日に何回も考えてしまうほどだ。
だが、昔に戻れるなんてそんな非科学的なことはあり得ない。あり得るはずがないのだ。
もしそんなことが可能なら、世界中の常識が覆ること間違いなしだ。
……そんな常識が覆るような事態に、俺は遭遇してしまったわけだが。
なぜなら俺は今、二年前に卒業したはずの母校である香館高校の教室で、十五歳の高校一年として授業を受けているからだ。
ちなみに本当だったら自分は、今年で二十歳。成人だよ、俺。
「なんでこうなった……?」
ちょっと思い出してみる。どうしてこうなったのかを。
☆
夏も終わり、周りに見える山々も赤、黄色などと色づいてきた九月のある日のこと。
「うーん、今日も働きましたっと」
今年で二十歳になった俺こと、伊吹結人(いぶき ゆいと)は、仕事が終わり自宅に向かう。
高校を卒業して二年が経ち、社会人としての生活に慣れ浸しんでいた。
進学はせずに、就職して一人暮らしも始めた。最初は苦労したものだが二年も経てば、慣れたものだ。
会社でも、先輩や上司の関係も上手くいっているし、仕事も楽しい。
今の生活に何の不満もないが、実は俺の心の中には過去に対する後悔があったりする。
「……あそこに行くか」
その後悔を思い出すことが、度々あるのでそういう時は決まって、とある場所へ行く。
そこは高校の時によく行っていた丘で、中央には東屋と大きな木がある。
「……やっぱりここは気持ちがいいな」
木に背を預け、座り込む。よくここでラノベを読んだりとか、友達とゲームしたりした。
そんな楽しい思い出が蘇る。
そして思う。
「昔に戻りてぇ…」
「なに変なこと言ってるの?」
「んっ?」
俺が思わず呟いてしまったセリフに誰かが呆れたような口調で、俺に言ってきた。
声が聞こえた上の方を見ると、地上から三メートルぐらいの位置にある太い枝に座っている女性がいた。
「奈月? こんなところで何してんの?」
「急に昔が懐かしくなっちゃって、ここで本読んでたの」
そう言いながらラノベを見せるこの女性は、島奈月(しま なつき)。
俺の中学からの友人である。
特徴である茶髪のポニーテールが風で軽くなびいている。
「にしても結人。昔に戻りたいって、そんなこと思ってたんだ?」
「いや、別に。誰だって一度は思うことだろ?」
「あたしは思ったことないけど?」
「へいへい、そーですか」
どうせ俺は過去のことをいちいち気にしちゃうような男ですよ、と心の中で思いつつ、話題を変える。
「ところで、奈月。何読んでたんだ?」
「ラノベよ」
「お前、それ好きだ
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