第八章
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「そうよ。だって」
そうしてその強い言葉で言うのである。
「それは今までってことよね」
「そうなるわね」
真理奈のその言葉に頷いた。
「それじゃあ嫌よ。これからも」
それが真理奈の和歌子への願いであった。
「これからも御願い。それじゃあ駄目かしら」
「いいわ」
真理奈のその言葉ににこりと笑う和歌子であった。
「真理奈がそう言うのならね」
「悪いわね。何か図々しいけれど」
「いいのよ」
しかしそれを受け入れる和歌子であった。
「それはね。気にしないで」
「有り難う」
そしてそれにまた礼を言う真理奈であった。
「それじゃあいつもよりも」
「ええ、頑張ってね」
また真理奈に声をかけた。
「ハッピーエンドの為に」
「お店に出ればハッピーエンドが待っている」
「そうよ」
そこを強調してみせる。
「だから。すぐに出て」
「わかったわ。それじゃあ」
「ええ」
着替えながらのやり取りを終えて店を出る。するとすぐに支配人から声がかかってきた。
「あの、真理奈ちゃん」
「はい」
「お呼びがかかってるよ」
支配人は穏やかな声で真理奈に言ってきた。
「わかりました。それでどちらの」
「三番の方だよ」
そう真理奈に言う。
「コーヒーね。すぐ持って行って」
「はい、それじゃあ」
「けれど。真理奈ちゃんって人気あるんだね」
支配人はそのことを喜んでいるようであった。
「何よりだね、うん」
「人気がですか」
「人気があるのに越したことはないよ」
実に的を得た支配人の言葉であった。
「バニーガールじゃなくてもね」
「そうなんですか」
「そうに決まってるじゃない」
支配人の笑顔が明るくなる。こうして見ると一見好色そうなのにそれが好人物に見えるから不思議であった。真理奈もその顔を今見ていた。
「人気がないとね。人として寂しいよ」
「ですか」
「特にね。一人の人から人気がある」
支配人の声が少し真面目になった。
「それが一番大事かな」
「つまりそれってあれですよね」
この話は真理奈にもわかった。
「好かれているってことよね」
「愛だよ」
また支配人には少し似合わない言葉であった。
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