第12話 罪を共に
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り?俺たちが爆弾を仕掛けたのと同じ場所、同じ時間に、日本赤軍も爆弾テロを仕掛けたらしいねぇ。謙之介が仕掛けたお手製爆弾の威力なんて、本当にちっぽけなもんさ。それだけでは13人も殺せはしないよ。なんなら、アレでは怪我した人さえ居ないんじゃないかな?まあ、ここまでの大規模テロに紛れてしまうと、答えは藪の中だけどねぇ》
「…………」
小倉は少し、安堵してしまった。自分も爆弾を仕掛けていたという事実は変わらない。しかし、あれほどの爆発、あれだけの死傷者は、少なくとも、自分だけのせいではなかった。
ただそれだけで安堵してしまった。しかしすぐに、恐ろしい可能性に思い至る。
「……まさか、日本赤軍とやらを手引きしたのも、お前か?」
《……いや?そんな事はしていないさ。ただ、うっかり、あの工業地帯の警備当番表やカメラの配置図、簡易爆弾の作り方は漏らしちゃったかもしれないねぇ。でもこの行動に打って出たのは彼らの意思だよ。例え条件が整っても、意思が無ければ行動は起きないからね。13人を殺したのも、彼らの殺意だ。俺のじゃない》
「…………」
ごく当然の事のように語る田中の態度に、小倉は"逃亡者"田中智樹の、その理由を見た。13人。13人の命を、こいつはどう捉えているのだろう。条件を整えはしたが、実行したのは自分ではない。だから、自分は殺してなどいない。その理屈は間違ってはいないが、しかし、そもそも田中が条件を整えなどしなければ、こんな事にはなっていないのだ。殺意に手段を与えたのは、間違いなく田中なのである。しかし、田中はしれっとしている。ここまで完璧に、理屈による自己防衛によって罪悪感を回避する事ができる男……分かりきった事だが、田中智樹は、普通ではない。
《謙之介だって、行動を起こしたのは、俺の計画が完璧でミスる恐れもなく、なおかつ人命への配慮によって死傷者なんて出ないはずだと、謙之介自身が信じたからだろう?それは謙之介の意思だ。俺が無理強いしたからじゃない。だからこそ、その決断には価値がある。俺への信頼を示す決断としての、ね》
「何が無理強いしてない、だ……それをやんなきゃ、自分は死ぬだなんて、脅しておきながらよ……」
小倉はまた、パソコンの前に座り直した。画面にはハートマークだけが相変わらず映っており、その向こう側の田中がどんな顔をしているかまでは教えてはくれない。向こうには、自分の顔が見えてるのだろうか。この、冷や汗にまみれたひどい顔が。
「……何で、俺が今日爆弾を仕掛けたかってな……怖かったんだよ……俺がこれをやんなきゃ、お前が死ぬかもしれない、俺のせいでお前が死ぬかもしれないって事がな……お前に恨まれるって事が怖かっただけなんだ……だったら、顔も知らん誰かが傷つき死ぬかもしれねえけど、そんな事お構い
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