第12話 罪を共に
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息をつき、夜空を見上げた。田中の言った通り爆弾をしかけ、今や工業地帯が遥か遠くに見える所まで離れる事が出来た。寮生活での勝手な外出や門限破りなど、寮監の目を出し抜くような真似をした事は数限りなくあるが、今回はそれらとは全くもって重みが違う。寮監に見つかっても、殴られてボコボコになるだけで済んだ。今回はそれでは済まない可能性があった。やり直しの効かない一発勝負。そのプレッシャーは冬の寒空の下にも関わらず小倉に汗をかかせ、少し安心した今は、冷えた汗が小倉を凍えさせつつあった。
(そろそろか……)
小倉は腕時計を見て時間を確かめた。仕掛けた時限爆弾の起動時刻が近づいてきている。心の中でカウントダウンをしながら、小倉は遠くにポツポツと光を灯す工業地帯を振り返った。予定では、小さな爆発が起こるはずだった。死傷者が出ない程度の小さな爆発。5、4、3、2、1……
その瞬間、大きな火柱がいくつも上がった。突然量を増した光の眩しさに、小倉は目が眩む。続いて、雷鳴のような重く低い音が、大地を震わせてやってきた。腹の底を揺さぶられるような不快な感覚が続き、それが収まった時には、工業地帯は火の海になっていた。
「なっ……」
小倉は絶句する。そして火を噴く工業地帯に背を向け、逃げるように走り出した。
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《おかえりー》
小倉が自室に帰ってくると、田中の声がそれを迎えた。小倉は靴をほっぽり出すような形で即座に部屋に上がり、パソコンに写った毒々しいハートマークに向かって吠えたてた。
「てめぇ話が違うだろォがァ!!何が小規模な爆発だ、何が死傷者は出ないだ!!一体何台救急車が走ってたと思ってんだ!!嘘つきやがったなコノヤロォ!!何人……何人傷ついたんだ……」
《……興奮してるねぇ。そんなに死傷者数が気になるなら、テレビでもつけてみたら?》
他人事のように返す田中にどうしようもなく苛立ちながら、小倉は自室のテレビをつけた。チャンネルを回すまでもなく、工業地帯大炎上の緊急ニュースが流れている。テロップを見て、小倉は愕然とした。死者13名、負傷者78名……血の気が引いた。足に力が入らなくなり、その場に思わず腰をついた。13人?13人もの人生を、俺が終わらせたって言うのか?
《……犯行声明は、国内左派過激派・日本赤軍から出ており……》
「……え……?」
ボンヤリと薄れていきつつあった意識の中で聞いた、テレビの向こうのアナウンサーの言葉に、小倉はキョトンとした。日本赤軍?聞き覚えのない名前だが、テレビの報道では、工業地帯大爆発の大規模テロの犯人が日本赤軍であると、そう報道されていた。
《もうお分
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