第12話 罪を共に
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を打つ事自体が目的だからねぇ。そこはちゃんと配慮してるよ。俺は人非人じゃあない》
田中はサラッと言ってのけるが、小倉としてはどうしても、この破壊工作への抵抗感は拭いきれない。前回のイタ電に関しては、田中の言う通りにしたところ、現時点では足はついてない。公安の連絡規則の情報を入手し、回線への割り込みを果たして、なおかつ追跡を逃れられたというのだから、この田中という少年の実力は、ただ学校において優等生、という程度のものではなく、小倉の想像の斜め上をいっている事は確かだ。しかし、事が事である。イタ電で人は傷つきはしないが、爆弾は違う。誰かを殺傷する可能性は、多分にある。田中は人命に配慮すると言ってはいるが、そもそも爆弾テロを唆すような奴が、人命になんて配慮するのか?自分自身の命が危ない奴が、他人の命に遠慮なんてするのか?
《あ、疑ってる?そりゃ、そうだよねぇ。国家に追われてる爪弾き者の計画なんか、信じられないのは当たり前だ。この前と一緒だ。信じない理由を見つけるのは、メチャクチャ簡単なんだよ。このまま、俺の言うことを無視するかい?それも良いだろう。むしろ、君の将来を考えたら、俺と関わるリスクなんて犯さず、さっさと見捨てれば良いんだ》
「…………」
メモ帳に記された、行動開始の時刻は刻一刻と近づいてきている。小倉は、メモ帳と時計とを、何度も交互に見た。
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(……ここで、二十秒待つ)
小倉が足を止めて、物陰に伏せる。足音がカツコツと通り過ぎていき、守衛の姿が見えなくなったのを確認して、小倉はまた歩みを進めた。
その手には、田中に言われた通りに作った爆弾。改造した時計を起爆装置にした時限爆弾である。小倉が潜入したのは港湾工業施設群の一角だった。夜間でも、機械設備のゴウンゴウンという重低音がBGMとして響き、暗闇の中にポツリポツリと、小さな電灯の光が星のように輝いている。
小倉は、油臭い空気に顔をしかめさせながらも、感心した。田中の送ってきた行程表は、寸分違わず警備の目をくぐり抜けている。神がかり的である。数十秒単位で移動し、警備網の隙間をピンポイントで突くなんてのは、引っ切り無しに到着する電車を事故なく整理するダイヤを構築するような真似で、例えカメラの位置どりや見回りの時間などの情報を一通り知っていたとしても、誰もがここまでやれるとは思えなかった。
どうして。小倉は歯噛みした。どうしてここまで優秀なのに、その力をもっとマトモに使えなかった。小倉は内心で呟きながら、夜の闇を行く。
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「……はぁ」
小倉は
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