第12話 罪を共に
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無かった。そんなピンチなど、最初からできあがっていなかったのだ。むしろ、小倉にあの"イタ電"をかけさせる為に、ピンチを演出していたようにさえ見える。要するに、田中は今の追われる状況を、"愛の実験"とやらに利用していた。
《で、何で今日俺が連絡をとったかと言うと、誕生日を祝いたかったのもそうだけど、愛の実験の二回目をやりたいと思ったからだ。俺からの誕生日プレゼントだよ!》
「……また何かやれって言うのか……どうせロクな事じゃねえんだろ……人生で一番嬉しくない誕生日プレゼントだ……」
小倉が呻いているのを斟酌する事もなく、画面にはメモ帳のウィンドウが開く。今度は、前回とは比べものにならないほど細かい指示が出ていた。空き缶に便所紙の芯を入れ、灯油、卵白、塩を芯の中に詰め…………それらの材料をどこでいつ、仕入れるかまで指示が出ていた。
「……おい」
《質問?》
「ああ。……これ、一体何の工作だ?」
《うん、簡単な爆弾の作り方だよ。そいつを使ってひと騒ぎ起こして欲しいんだ》
「……ば……ばく……ハァ!?」
小倉は目を釣り上げた。爆弾。メモ帳には、その爆弾をある地点に置いて帰ってくるそのプロセスが事細かに記されていたのである。
「ふざけんな!おまっ……俺に爆弾テロリストになれってのか!?イタ電だけじゃ飽き足らず……お前は俺も犯罪者に仕立て上げたいのかよ!?」
《大丈夫だよ〜。バレないようにちゃぁーんと考えてんだからぁ》
「バッ……バレるとかそんな問題じゃねえよ!何故だ!?理由を言え!」
小倉は、今回"実験"に関しては腰が引けた。いや、前回の公安の撹乱というのも十分気が引ける行為だったのだが、今回は"イタズラ"程度では済まない。爆弾を仕掛けるというのだ。テロリストになれというのである。もちろん、爆弾というからには死傷者も出るだろう。こいつは、自分と一緒に咎人になれと要求してきてるのだろうか?
《一言で言うと、捜査の撹乱の為だね。知ってると思うけど、公安や警察の俺に対する捜査は秘密裡に行われてるんだ。俺の存在自体が、彼らにとってはスキャンダルみたいなもんだからね。おおっぴらに探す訳にもいかないらしい。そこでだ。爆弾テロが起きてしまったら、どうする?世間の目はそっちに向いて、警察も公安も、そちらに人員を割いて捜査せざるを得なくなるだろう?結果、俺に対してのマークが大幅に薄くなるわけ。段々俺に対する包囲網も縮まってきてるからね。隙を作るのはとても大事な事さ》
「お前自身が警察のスキャンダル?ますます、何やらかしたってんだよ…………理屈は分かったが、その為に、誰かに爆弾の巻き添え食わせろってのか?」
《大丈夫だよ!俺の計画では、人が居ない場所を狙うつもりだ。犠牲者は出ないよ。爆弾テロという狂言
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