第3部 始祖の祈祷書
第5章 工廠と王室
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ぬ」
マリアンヌは首を振った。
「恋ははしかのようなもの。熱が冷めれば、すぐに忘れますよ」
「忘れることなど、出来ましょうか」
「あなたは王女なのです。忘れねばならぬことは、忘れねばなりません。あなたがそんな顔をしていたら、民は不安になるでしょう」
諭すような口調で、マリアンヌは言った。
「私は、何のために嫁ぐのですか」
苦しそうな声で、アンリエッタは問うた。
「未来のためですよ」
「民と国の、未来のためですか?」
マリアンヌは首を振った。
「あなたの未来のためでもあるのです。アルビオンを支配する、レコン・キスタのクロムウェルはや心豊かな男。聞くところによると、かのものは『虚無』を操るとか」
「伝説の系統ではありませぬか」
「そうです。其れが真なら、恐ろしいことですよ、アンリエッタ。過ぎたる力は人を狂わせます。不可侵条約を結んだとはいえ、そのような男が、空の上からおとなしくハルケギニアの大地を見下ろしているとは思えません。軍事強国のゲルマニアにいた方が、あなたのためなのです」
アンリエッタは、母を抱きしめた。
「……申し訳ありません。わがままを言いました」
「いいのですよ。年頃のあなたにとって、恋は全てでありましょう。母も知らぬわけではありませんよ」
母娘はしっかりと抱き合った。
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