第3部 始祖の祈祷書
第5章 工廠と王室
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ムウェルは満足げに頷くと、ボーウッドの肩を叩いた。
「彼女は、東方『ロバ・アル・カリイエ』からやってきたのだ。エルフより学んだ技術で、この大砲を設計した。彼女は未知の技術を……、我々の魔法の体系に沿わない、新技術を沢山知っておる。君も友達になるがいい、艤装主任」
ボーウッドはつまらなそうに頷く。
彼は心情的には、実のところ王党派であった。しかし彼は、軍人は政治に関与すべからずとの意思を強く持つ生粋の武人であった。
上官であった艦隊司令が反乱軍側についたため、しかたなくレコン・キスタ側の艦長として革命戦争に参加したのである。
アルビオン伝統のノプレッス・オブリージュ……、高貴なものの義務を体現するべく努力する彼にとって、未だアルビオンは王国であるのだった。
彼にとって、クロムウェルは忌むべき王権の簒奪者なのだ。
「これで、『ロイヤル・ソヴリン』号にかなう艦は、ハルケギニアのどこを探しても存在しないでしょう」
ボーウッドは、間違えたふりをして、此の艦の旧名をを口にした。
その皮肉に気づき、クロムウェルは微笑んだ。
「ミスタ・ボーウッド。アルビオンにはもう『王権(ロイヤル・ソヴリン)』は存在しないのだ」
「そうでしたな。しかしながら、たかが結婚式に新型の大砲を積んでいくとは、下品な示威行為ととられますぞ」
トリステイン王女とゲルマニア皇帝の結婚式に、国賓として初代神聖皇帝兼貴族議会議長のクロムウェルや、神聖アルビオン共和国の閣僚は出席する。
その際の御召艦が、この『レキシントン』号であった。
親善訪問に新型の武器を積んでいくなど、砲艦外交ここに極まれり、である。
クロムウェルは、何気ない風を装って、呟いた。
「ああ、君には『親善訪問』の概要を説明していなかったな」
「概要?」
また陰謀か、とボーウッドは頭が痛くなった。
クロムウェルは、そっとボーウッドの耳に口を寄せると、二言、三言口にした。
ボーウッドの顔色が変わった。
目に見えて、彼は青ざめた。
そのぐらいクロムウェルが口にした言葉は、ボーウッドにとっての常軌を逸していた。
「バカな!そのような破廉恥な行為、聞いたことも見たこともありませぬ!」
「軍事行動の一環だ」
こともなげに、クロムウェルは呟いた。
「トリステインとは、不可侵条約を結んだばかりではありませんか!このアルビオン長い歴史の中で、他国との条約を破り捨てた歴史はない!」
激昂して、ボーウッドは喚いた。
「ミスタ・ボーウッド。それ以上の政治批判は許さぬ。これは、議会が決定し、余が承認した事項なのだ。君は余と議会の決定に逆らうつもりかな。いつから君は政治家になった?」
それを言われ
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