第六章
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イプだ。それなら、と決めたのであった。
「御願いね」
「ええ。一週間経ったらね」
「一週間ね」
「それだけあれば充分だから」
そうも言ってみせる和歌子であった。
「任せてね」
「ええ」
こうして真理奈は一旦は落ち着いた。そうしてアルバイトを再開するのだった。とりあえずお金は溜まっていく。しかしだ。彼女は心の中に不安を抱き続けていた。
「和歌子はああ言ってくれているし」
とりあえずは和歌子を信じていた。しかしそれでも。
「上手くいくのかしら、本当に」
不安の理由はそれであった。どうしても上手くいくとは思えなかったのだ。その相反する気持ちが心の中でせめぎ合っていたのだ。
「高谷君と。デートを」
あれこれ考えているうちに一週間経った。すると和歌子が彼女に声をかけてきた。
「今日よ」
「一週間よね」
「ええ。それでね」
和歌子は言う。
「お店に来て欲しいのよ」
「お店に?」
「そういうこと。いいわね」
真理奈に対して告げるのだった。
「それだけでいいから」
「お店に行くだけでいいのね」
「真理奈はね」
また真理奈に言うのだった。
「それだけでいいから」
「私はそれだけでいいって」
何か引っ掛かるものがあった。真理奈も目をきょとんとさせてそれから首を捻る。
「どういうことなのよ」
「少なくともハッピーエンドは期待していて」
彼女は真理奈にこう告げて安心させた。
「わかったわね」
「ええ」
何が何なのかわからないまま和歌子の言葉に頷く。
「それで上手くいくのなら」
「一つ言っておくことがあるわ」
和歌子はここで真理奈に静かに告げてきた。
「何を?」
「女の子が必死に誰かの為にすることは全部正しいのよ」
珍しくくすりと笑ったうえでの言葉であった。
「特に好きな人の為にすることはね」
「そうなのよ」
「そうよ」
そう真理奈に答えた。
「それが神様が女の子に与えてくれた最大の贈り物なんだから」
「贈り物って」
「必死にすることが正しくなるってことよ」
和歌子はまたそれを真理奈に告げた。
「いいわね。それを信じればいいのよ」
「じゃあ今は」
「安心してお金稼ぐのよ」
和歌子が言いたいことは結局のところそれであった。
「今はね。わかったわね」
「わかったわ。それじゃあ」
まだ不安が心の中を支配していたがそれでもであった。真理奈も頷くことにした。
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