第3部 始祖の祈祷書
第4章 三つ巴の探り合い
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魔法学院の東の広場、通称『アウストリ』の広場のベンチに腰掛け、ルイズは一生懸命に何かを編んでいた。
春の陽気が、いつしか初夏の日差しに変わりつつある今日だが、ルイズの格好は、春の装いとあまり変わらない。
この辺は夏でも乾燥しているのだった。
アルビオンから帰ってきて十日ばかりが過ぎていた。
今はちょうど昼休み。
食事を終えたルイズはデザートも食べずに広場へやってきて、こうやって編み物をしているのだった。
ときおり、手を休めては『始祖の祈祷書』を手に取り、白紙のページを眺めて、姫に相応しい詔を考える。
周りでは、他の生徒がめいめいに楽しんでいる。
ボールで遊んでいる一団がいた。
魔法を使い、ボールに手を触れずに木に吊り下げた籠に入れて、得点を競う遊びだ。
魔法バージョンのバスケットボールみたいなものである。
ルイズはその一団をちらっと眺めたあと、切なげに溜息をついて、作りかけの自分の作品を見つめた。
はたから見るとその様子は、一幅の絵画のようだった。
ルイズはほんとに、黙って座っているだけで様になる美少女なのである。
ルイズの趣味は編み物である。
小さい頃、魔法がダメならせめて器用になるように、と母に仕込まれたのであった。
しかし、天はルイズに編み物の才能は与えなかったようである。
ルイズは一応、セーターを編んでいるつもりであった。
しかし、出来上がりつつあるのはどう贔屓目に見ても捻じれたマフラーである。
というか複雑に毛糸が絡まりつつあったオブジェにしか見えない。
ルイズは、恨めし気にそのオブジェを眺めて、再び溜息をついた。
あの、厨房で働くメイドの顔が目に浮かぶ。
彼女が、ウルキオラに紅茶とケーキを振る舞っているのをルイズは知っていた。
あの子はご飯が作れる。
キュルケは美貌がある。
じゃあ、自分には何があるのだろう。
そう思って、趣味の編み物に手を出してみたのだが……、あまりいい選択ではなかったようだ。
そんな風に作品を眺めて軽い鬱に入っていると、肩を誰かに叩かれた。
振り向くと、キュルケがいた。
ルイズは慌てて、傍らにおいた始祖の祈祷書で『作品』を隠した。
「ルイズ、何してるの?」
キュルケはいつもの小ばかにしたような笑みを浮かべ、ルイズの隣に座った。
「み、見ればわかるでしょ。読書よ、読書」
「でも、その本真っ白じゃないの」
「これは『始祖の祈祷書』っていう国宝の本なのよ」
ルイズは説明した。
「何でそんな国宝をあなたが持ってるの?」
ルイズはキュルケに説明した。
アンリエッタの結婚式で、自分が詔を詠みあげること。
その
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