第四章
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第四章
「どうにもな」
「ああ、清浦な」
「あいつはかなりな」
「ミステリアスっていうかな」
「何考えてるかわからないからな」
恵子の評価は政行と周囲で大体同じである。実際に彼女は成績優秀でもあるがそれ以上に訳のわからないところがあるのである。
「どうにもな」
「これはな」
「さて、どうする?」
「清浦の家に行くんだろ?」
「ああ、行く」
それはもう決めている彼であった。既にである。
「それはな」
「まあそうしろ」
「行かないと話がはじまらないからな」
「だよなあ。さて、どうなるのかな」
期待以上に不安が大きかった。そのうえで恵子の家に向かうのであった。彼女の家はマンションにあった。そこの三階に向かいダークレッドの扉の前でチャイムを鳴らすとであった。グレーのセーターの上にワンピース状の黒いロングスカートを着た彼女が出て来た。
「いらっしゃい」
「あっ、うん」
「用意できてるから」
こう言う恵子だった。
「入って」
「それじゃあ」
こうして政行は恵子の家の中に入った。まず案内されたのはリビングだった。木の廊下を進んでそのうえでリビングに入るとだった。恵子はすぐテレビをつけてきた。
「テレビ?」
「DVD」
一言であった。
「それ観るから」
「DVDなんだ」
「モーツァルトのオペラあるから」
「モーツァルトなんだ」
「そう」
またモーツァルトであった。学校に続いてである。
「それじゃあ」
「あのオペラだけじゃなかったんだ」
政行はそれを聞いて少し意外な顔になったのだった。
「モーツァルトって」
「モーツァルトは天才」
恵子はDVDのスイッチ等を入れて実際にディスクも入れて動かしてからそのうえで彼の横に座ってきた。二人並んでそれぞれのクッションの上に座っている。
「天才だから」
「他にも作品あるんだ」
「ある」
まさにあるのである。
「これも」
「あれっ、この曲は」
最初にかかったその曲を聴いて言う彼だった。
「聴いたことあるよ、この曲」
「フィガロの結婚」
恵子は静かに言ってきた。
「それの序曲」
「あっ、フィガロの結婚っていったら」
「そう。それもモーツァルトの作品」
そうだというのである。
「そうなの」
「そうだったんだ。それにしても」
「どう?」
「いや、これもいい作品だよね」
音楽と歌と聴きながらの言葉である。
「とても」
「モーツァルトは天才」
また言う恵子だった。
「だから」
「そうなんだ。っていうか」
「っていうか?」
「天才とかそういうの理由にならないじゃないかな」
それを言うのである。
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