漂流民―水相におけるイグニスからネメス―
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。生きている事が罰。死ぬまで逃れられない。
「嫌だ」
ウラルタは涙を堪え、家へと走り出す。
「嫌だ!」
私は、それを信じて大人になりたくない。
下級神官の簡素な法衣が風を含み、ばたばたと音を立てた。不変の夕闇が、空を支配していた。
家に帰りついた。
戸に封筒が挟まれていた。
ウラルタは一瞬冷静になり、封筒を戸から抜いた。
差出人は自分の名前だった。
出された町の名前はネメスとなっている。
そして、消印は、未来の日付だった。
香の匂いが鼻に満ちた。ウラルタは目を開けた。やけに高い天井だ。温かい。目線を下に落とす。毛布が見えた。宿をとった覚えはなかった。呆然としながら記憶をたどった。
階段から落ちたのだ。死者たちを追いかけて。次第に周りを見回す余裕が出てきた。ウラルタの左右にもベッドがあり、人が横たわっていた。どちらの人も老いていた。そしてベッドの列は、長かった。
尼僧が歩いて来たので施療院だとわかった。尼僧はウラルタが目を開けている事に気付くと、歩いて来て、枕もとのベルを鳴らした。そして、無言で去った。
間もなく下級神官が来て、
「君は誰だ?」
立ったまま尋ねた。
「どこから来た?」
ウラルタは具合が良くないふりをして答えない。神官は呆れたように溜め息をついた。
「イグニスのウラルタ。侍祭を務めている。そうだな」
「……何故それを?」
だが、答えられなくてもわかった。旅券だ。下級神官は威圧的な口調のまま質問を重ねた。
「歳は」
「十四歳」
「イグニスから何をしに来た?」
ウラルタは答えない。下級神官は首を横に振った。
「町に帰りなさい。子供とはいえ、民の務めを放棄した罪は重い」
「民……」
ウラルタは、まだ眠い、ぼんやりした声で反発した。
「私たちに国はないわ。陸地が消えたこの世界で、私たちを庇護する国はない。あるのは、私一人いなくなったところで誰も困らない、小さな町だけ……」
「そのような事は関係ない。私たちは、ただ神の為にある民だ」
「何故そのような民が生まれたの」
ああ、私は、何故、生まれたの。
「神を奉じる為だ」
下級神官はウラルタの無知を憐れむように、膝を屈め声を落とした。
「神は我らに生きる事を許し、恵みを与えてくださるが、奉じる者がいなければ神ではなくなってしまう。我々は生きていけなくなる」
「生きていけなく――」
ウラルタは弱弱しく呟いた。
「ただ生まれ……ただ生きて……ただ神の為に生きて……それが何になるというの……」
「何になるかは問題ではない。我々には信仰が必要なのだ」
下級神官は、腰の飾り帯から鍵束を取った。そして、一本の太い針金を緩く、しかし決して抜けないように手首に巻き、先端をよじった。
「大人になりた
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