Interview9 我が身を証に
「お前には傑出した才能があるのだ」
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ょう? 渇き餓えれば何か食べたいし、その『エサ』のせいで友情や愛が壊れた者は後を絶たなかったっていうのに。奴らはこっちが足掻くのを愉しんでるの。今この時もね。尊師が亡くなられて、イリスが仕損じてからは、賭け対象の範囲を子孫にまで広げた」
イリスは震える息を大きく吐いて、自身を両腕で抱き締めた。
「……そこにいるビズリーもそう。彼は分流だけど。ユリウスも、リドウも、分史対策エージェントと呼ばれる子たちは、みんなそう。貴方たちは同じ血と悲劇の下に産まれた家族なのよ」
ルドガーは、列車テロの時にビズリーに対して不思議な信頼を感じた理由を、ようやく理解した。
家族。同じ血と宿業。これがあの時、そう思わせた根源。
「そして彼女もまた然り、だ」
ビズリーがイリスを示し返した。
「イリス・クルスニク。クルスニク一族の2代目族長にして、尊師クルスニクの一人娘。2000年前のオリジンの審判、第一審の生き証人だ。ゆえに我らクルスニクの全員がごく薄くとはいえ導師の血を確実に継いでいる。彼女は我々にとって母なる人というわけだ」
イリスにジュードたちの注目が集まったが、イリスは全く動じなかった。
「確かに子孫は遺したけれど」
イリスは下腹部、おそらく女性では子宮があるであろう部位を撫でた。あそこ、から、自分たちの先祖が。自分が。想像すると生々しかった。
「2000年も経てば血族はバラバラ、個々の血も薄まった。骸殻を持って生まれるのは、我らの血をより濃く再現した者たちに限られる。今は千人に一人いるかいないかですって? 番犬がここまで見越していたならいっそ天晴れだわ」
かつん。かつん。ローファーの音を鳴らして、イリスがルドガーの傍らに来た。
「ルドガーは直系だからかしら、尊師の先祖返り……いいえ、ここまで似ていると、生まれ変わりじゃないかとさえ思えてくるわ」
「俺が?」
「これはイリス個人の感想。現実的な確率としてはありえないけど」
ルドガーの頬を撫ぜる、ゴム越しの指の、細さ。
「そうだと、いいな」
愛惜に潤む翠眼にルドガーが見入る内に、イリスはルドガーから指を引いた。
「一つの時計で100%の骸殻を引き出せる者は稀だ。強い骸殻の持ち主ほど深く隠れた分史に進入できるのはすでに承知していたな。お前には傑出した才能があるのだ、ルドガー」
「才能……」
ルドガーは真鍮時計を取り出して見下ろした。世界を壊す力を才能と呼ぶのは憚られた。
「自信を持て。ルドガー・ウィル・クルスニク。才能と思いたくないなら、それはお前の『可能性』だ」
「可能性――?」
それは才能よりも、ずっと何かを成せる心持になれる響きだった。
「ありがとうございます。少しでも社長と
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