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パンデミック
第六十六話「狂気を超えて」
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には覚えがあった。
今のブランクが纏う空気に。

「ハッハハハハハハッ…………会イタカッタゼェ……今ノテメェニ………」

ブランクがゆっくりと顔を上げる。


「…………………………アァ?」


レオは怪訝な表情を浮かべる。

理由はブランクの表情だった。
以前戦った時とは少し様子が違っていた。

顔の“半分”だけがあの時のようだった。
右目だけが赤黒い爬虫類のような目に変わっており、口元の右端だけが歪んだ笑みを浮かべている。

「俺は…………お前ヲ殺ス……だが、人間性を捨てない………絶対ニ……」

気を抜けばすぐに“コープス”の側に意識が傾きそうだった。
必死に自我を保ちながら、レオの拳を受け止めている。

「舐メテンノカアァァクソ野郎ォォォオオォオォォオオォ!!!!」

止められた拳に更に力を込める。

「ぐっ…………ッ!!」

ブランクの足元がひび割れ、陥没する。
おまけに片脚が無いため、踏ん張ることも出来ない。


「がぁぁぁ!!!」


一瞬、ブランクの両目が赤黒い爬虫類のような目に変わる。
それに気づいた時にはもう遅かった。
レオの巨体があっさりブランクの方に引っ張られる。

「グゥッ!?」

引っ張られたと思ったのも束の間。勢いを殺さずそのままぶん投げられた。

「ウォアアァッ!!??」

硬化の力で肥大化した250cmの巨体が、容易く宙を舞った。


「はぁ…………言うコト聞けヨ……? 人間捨てルわけにはいかナいんダ……」

ブランクがそう呟くと、赤黒かった目が片目だけ人間のものに戻った。



「殺ス………殺スコロスコロス殺スコロス殺ス!!! 殺シテヤルウゥゥァァアァアァァ!!!!」

怒り狂ったレオは、何度も何度も地面に拳を叩き付け、ギチギチと鈍い音の歯軋りをする。

「………」

ブランクの視線の先にあるのは、黒色の鎧を纏った狂気の怪物……ではなく
その怪物に奪われた片脚。

「………はぁ……」

不意にブランクが深いため息を吐いた。
そしてゆっくり顔を上げ、荒げていた呼吸を整える。

「……今だケでもいイ。力を寄越セ」

その言葉と同時に、ブランクの身体に変化が訪れた。
引き千切られた脚の断面から、どす黒い液体がドロリと溢れ出してきた。
液体は段々と形になっていく。失ったはずの脚の形に。
さらに、体内からグチャグチャと歪な音が鳴り響く。音が鳴る度にブランクの身体が揺れる。
複雑に折れた骨。衝撃でズタズタになった内臓。限界を超え破壊された筋肉。
それらがコープスウイルスの力で瞬く間に修復されていく。



「………ハ、ハ、ハ、ハ………」

両目が赤黒い爬虫類のような目に変わ
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