第七話
[1/2]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
(うーん・・・)
朝食中。手の中の陶器製のカップを見ながら、葵は小さく唸った。
(・・・やっぱり、力加減は完璧だな。流石パッチ)
例えば、誰かが腕を怪我して切断せざるを得なくなり、その代わりに義手をつけたとしよう。その誰かは、カップを割らずに持つことが出来るだろうか?
答えは否である。
力を強く入れすぎて割ってしまうかもしれない。もしくは、力を抜きすぎて落としてしまうかも知れない。
今まで合った物から変わってしまえば、それに対する習熟期間が必要だ。それがリハビリである。
しかし、パッチは違う。
原作で、主人公の不知火も言っていた。
『ちょっと力を入れれば殺すことは出来る。だが、手加減して怪我させない事も出来る』と。
パッチとは、刹那の間に進化を完了させる力であり、同時に、その刹那の間に、本来長い長い時間をかけて行うハズの習熟を、体に叩き込む力も持っている。進化したその瞬間には、力の使い方を完璧に理解している。力に振り回されることなく、その力を十全に使い切る事が出来る。
(・・・パッチか・・・。すげえよな。この世界の火星にはないのかな。・・・まあ、合ったら合ったで戦争の原因になりそうだけどさ)
人や動物を進化させる力だけではない。何せ、環境調整パッチと呼ばれる巨大なパッチさえあれば、一つの都市分の水や電気、ガスなども生み出す事が出来る。無から有を生み出すという人類の夢が、現実のものになる。
(・・・ダメだな。間違いなく戦争の原因になるわ。第三次大戦が俺のせいで勃発とか洒落にならん。いつも以上にウッカリには気を付けないと・・・)
自分が知らぬ間にかなりのミスを犯す性格であることを理解している彼は、絶対にこの力は政府とかにバレないようにしないと・・・と決意を新たにして、カップに入ったコーンスープを飲み干した。
「行ってきまーす。」
「はい、行ってらっしゃい。」
「気をつけてな。」
両親の言葉を背に受け、寝不足で重い頭を振りながら、彼は家を出た。
(・・・あっちゃ〜・・・)
授業中。葵は頭を抱えていた。別に勉強が分からない訳ではない。これでも、前世では高校生だったわけで,小学生の勉強程度で躓くわけもない。それに、記憶を取り戻すまえの伏見葵としても、かなりよく勉強していたのだ。前世の小学生の時よりも授業内容が進んでいる気はしたが、それも誤差のようなものであった。
彼の隣の席には、なのはが座っている。・・・そのなのはは、先ほどから机に突っ伏してグッスリと眠っていた。今は教師が説明に夢中になっていて気がついていないが、それも時間の問題だろう。教壇というのは、
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ