Interview9 我が身を証に
「彼らはクルスニクの子ではないから」
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く、出会ってきた人はいつでも優しかったという気がしてくる。レイア・ロランドはそんな不思議な魅力の持ち主だ。
「ところで、アルヴィンとエリーゼに電話したのでしょう。どうだったの」
――イラート海停を発つ前、エリーゼとアルヴィンは探索エージェントたちの治療をすると言って宿に残った。
エリーゼはともかく、アルヴィンが留まったのは他ならぬエリーゼから懇願があったからだ。
「うん。今ちょうど全員分の治療が終わったって。後は病院でってことで。今からアルヴィンと一緒にこっちに戻るって」
「ナイトが付くなら心配しなくていいかしら」
「そだね。何だかんだでエリーゼってアルヴィンと仲良しだし」
――エリーゼ・ルタスは分史ヘリオボーグでの光景を引きずっている。目を離したらアルヴィンがいなくなりはしないか、という恐怖が彼女の心を蝕んでいる。だからアルヴィンを手放せない。仕事に行く親に行くなと駄々をこねる童のようで、大層愛らしいではないか。
(でも、言わない。彼らはクルスニクの子ではないから)
「ねー、イリス。一つ聞いていい?」
「何なりと」
「イリスは何でクランスピア社を脱走したの? まさか、ここの人たちに酷いことされたとか――」
「それこそ、まさか。目新しい物ばかりで、最新の情報はすぐ手に入ったし、何より常にクルスニクの子どもたちに会えた。仲良くなれた子もいたのよ。――だからこそ出て行こうと決意した。始祖の大事な子どもたちが、これ以上、精霊に破滅させられる前にケリをつけようと思って。兵器扱い自体はいいのだけど、自由に動けないのは困りものだったから」
脱走して半年。イリスはカナンの地の「王」を平らげうるだけの器となるため、正史分史を問わず奔走した。
有体に言えば、実体化した大精霊を探し出しては喰らった。源霊匣セルシウスにしたように。
「後悔、してる? ルドガーに付いてクラン社に来たこと」
「いいえ。ルドガーと共に戻ってきたのだから、これがイリスの運命なのでしょう」
「そっか…」
するとレイアはぴょこんとソファーを立ち上がり、イリスへ手の平を差し出した。
「じゃあイリスと、ルドガーも、その運命ってヤツ、ちょっとでも早く何とかできるよう、頑張ってこう! ね?」
(ああ、やっぱり――どうして彼女はこんなにも優しくまばゆいのかしら。まるでお日様を一心に見つめ続けるひまわりのようだわ)
イリスはレイアの手の平に手を重ねた。
記者見習いと精霊モドキ、二人の少女の不思議な友情が結ばれた瞬間だった。
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