第11話 イタ電
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の間、俺は謙之介の、俺を信じる心を確かめたいと思う》
「……恥ずかしげもなく何を言ってやがんだよ……やっぱお前なんかに、あんな事言わなけりゃ良かった……」
小倉は頭を抱えた。自分の気の迷いが生んだ一言の質問が、田中をこんな奇行に走らせてしまったのか。……いや。小倉は、すぐにその可能性を否定した。田中はこのUSBを、昼休みのあの言葉を聞いた時点で既に持っていた。つまり、USBの中身については、自分が「愛って何だ?」と尋ねる前に既に完成していた。という事は、最初から自分にUSBを渡すつもりではいたのだろう。いつそれを自分に渡すか、測っていただけで。今日じゃなければ、やはり間近に迫った自分の誕生日だったのかもしれない。
《まぁまぁ。臆面もなく口に出すのは憚られるかもしれないけど、大事な問題じゃないか、愛。君もその中身を知りたいし、俺も自分の仮説を確かめたい。英語で言うと、WIN−WINだぜ?君の願いに関しては、この実験が必ずしも愛の本質を突いたものかは俺も保証はできないが、しかし、一つの仮説を元に試してみる事で、見えてくるものは必ずあるはずだ。モノを考えるには、叩き台って奴、必要だろ?》
「…………」
《よし、実験の方法を説明しよう。とても簡単だ。これから謙之介は、俺の言う事を信じて、そして行動する。ただそれだけだよ。どう、簡単だろ?》
確かに、簡単だ。しかし、一体、それでどうなるというのだろう。小倉は、田中の真意を測りかねた。
《よーし、それじゃ、早速実験一回目だ。今、画面にネット電話の発信画面を出した。このパソコンからネット電話をかけて、この文章を読み上げて欲しい。》
小倉の返事を待たず、田中は続けた。ハートマークだけが映っていた画面に、人気ネット通話アプリの発信画面のウィンドウと、文章が打ち込まれたメモ帳のウィンドウが開いた。小倉は、この通話アプリをインストールした覚えは無いし、そこに表示された番号にも見覚えは無かった。そして、メモ帳に書かれた文章。何かの連絡文のようだ。その内容をよく見てみると……
「なぁ、田中」
《うん?質問?良いよ、どんどんするといい。信じる為には、判断材料が必要だからね》
「……この番号の相手、一体誰だ?それにこの文章……」
《ああ、この番号は、今謙之介の部屋に家宅捜索に向かってる内務省公安部の構成員のものだよ。で、この文章は公安の連絡規則に則って捏造したものだ》
公安。それほど教養の無い高校生でも、その響きが物騒な物だということくらいは分かる。家宅捜索?どうして俺が?俺はけして、正しく生きてきた訳ではないが、しかし、それでもお上に楯突くような真似までは……
《ハッキリ言った方が良いかな?追われてるんだ、俺。警察と公安、そして、他国の諜報員に雇
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