第11話 イタ電
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たが、あの2人でデートにでも出掛けたのだろうか。高田に限ってそんな事……とは、今の小倉は思えなかった。半月前、唐突にあんな事が起きたから……
小倉はため息をつきながら、USBを自室のパソコンに刺した。何で高田の事を考えてんだ、今は田中の事を気にするべき時だろ……自分自身に呆れながら、パソコンの電源を立ち上げる。
OSが順調に立ち上がっていくが、小倉は少し違和感を覚えた。いつもの画面のレイアウトと、何かが違う。よくよく確かめてみると、アイコンが一つ増えていた。毒々しいピンク色の、ハートのアイコン。そのアイコンが操作なしに、一気に画面全体に広がった。
「はっ!?」
小倉は部屋で1人、素っ頓狂な声を上げた。なんだこれは。こんなアプリインストールした覚えなんて無いぞ……そこまで考えて、今パソコンに刺さっているものの存在に思い至った。
(こいつか!?)
すぐに田中からの誕生日プレゼントを引き抜く。しかし、USBを抜いても、画面に広がるハートは消え失せない。どうやら、完全に侵入されてしまったらしい。ハートのアイコンはどうやっても最小化できず、他の機能を使おうにも、画面は全てハートに覆われている。つまり、パソコンが完全に無力化された。
「ちょっ!……どうなってんだよっ!」
小倉は両手をデスクに叩きつけた。プレゼントだと言われて受け取ったUSBの中身は、許可なしにパソコンに侵入する迷惑ソフトか!今目の前に田中の顔があったら、どんないい笑顔してても一発殴ってる。どうしようもない怒りを溜めた小倉に、その怒りの矛先の声が聞こえた。
《やあ、謙之介!やっぱりインストールしてくれたんだ!さっすが、謙之介ならあのUSB、かならず中身を確認してくれると思っていたよ!》
「あぁ!?」
小倉は周囲を見回した。もちろん田中は居ない。スマホを見てみた。もちろん繋がってない。最後に目が向いたのは、眼前で忌々しいハートマークを映し出している、自分のノートパソコン。そのスピーカーから、田中の声がした。
「てめぇえ!何て事してくれやがったんだ!ふざけんなよ、パソコンは高級財なんだぞ!イタズラで壊していいもんじゃない!」
《大丈夫大丈夫、確かに君のパソコンは占拠したけど、そんなに長く使えない事は無いよ。なんなら、今すぐにでも元に戻す事もできるさ。それは君次第かなぁ》
画面にはハートマークのみが映り、スピーカーからは田中の声だけが聞こえ、田中がどんな顔を画面の向こうでとっているかは分からないが、恐らく、いつも通りの良い笑顔で話しているのだろう。小倉は歯噛みした。
《で、今から始めるのは、昼休みにも言っていたように、愛の実験だ。俺は、愛というのは相手を信じる事だと思ってる。これからしばらく
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