第11話 イタ電
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ている。組織の論理で言えば、決して許されるようなものではないが、しかしこの組織自体、そもそも無かった事にされているような逸脱した組織である。そして、逸脱している事にこそ、この組織の存在価値は認められていた。
「あ、そうだそうだ。T事案な。多分、そろそろ動きあるぞ」
「そうねぇ。タイムリミットももうすぐだしね。可能性は高いわね」
ふと話題に上がった仕事の話。タバコに火をつけながら言った古本の言葉を、女性は背もたれに身を預けた楽な姿勢で聞いた。
「ま、大丈夫でしょう。あの娘がついてるしね」
「……あのさぁ、いくら公安のケツ拭きだからって、そう露骨にどうでも良いような態度とんの止めてくんない?結局、これに関してやった事と言えば、あいつ1人送り込んだだけじゃん。それも、青春ごっこという形でだ。勘弁してくれよォ。文句言われるの末端なんだよォ?上戸局長は思い上がってる、自分の事しか考えていない、立場をわきまえろって」
「そんなの、私に直接言えば良いのにねえ」
「言えねえから下っ端に言うの。市ヶ谷の魔女に面と向かって文句言える奴なんてそうそう居ねえって」
「ええー?あなたのような偏屈な部下のお小言もちゃんと聞くし、いつも周囲を気遣って忘れない、優しい女なんだけどなあ」
上戸と呼ばれた女性は古本の言葉に、心外そうに口を尖らせる。別嬪さんで、魅惑的だが、どこか妖しさも兼ね備えているのがこの上戸という女性だった。気さくで優しいし、人に好かれる要素満載でありながら、一方で、それらの印象とは真逆の顔を見せたりもする。ハッキリ言うならば、味方にしている分にはこれほど良い人間も居ないし、敵に回した時にはこれほど厄介な人間も居ない。それが市ヶ谷の魔女という仇名にも表れていた。
「……青春ごっこも大事よ。青春時代、あったでしょ?あなたにも、私にも」
「まぁねぇ〜。あんたのガキの頃は想像できんけど」
「あら?今と同じく、とても可愛いコだったわよ?……とにかくね、あの娘にも、ちょっとくらい味わわせてあげたいじゃない。青春ってヤツ」
「……相変わらず、気に入ったヤツには寛容だな〜」
「だって、あの娘、ホンット健気で、とっても可愛いんだもの」
上戸は笑った。穴ぐらに、よく通る活発な声が響いた。上戸のとぼけた様子に古本がついたため息が、そのままタバコの煙となって、天井へと登っていった。
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「……何が誕生日プレゼントだ、あいつ」
自宅に帰った小倉は、田中から受け取ったUSBを訝しげに見た。誕生日プレゼント、と田中は言っていた。これを渡した後、田中は実に元気そうだった癖に早退し、学校を後にしていた。何故か高田も早退し
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