暁 〜小説投稿サイト〜
イリス 〜罪火に朽ちる花と虹〜
Interview8 蝕の精霊 T
「わたしが契約する!!」
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「何、ですか、今の。精霊、を……食べ、た?」

 エリーゼの愕然とした声は、場の全員の心情を代弁していた。

「これでまた一歩前進した。フフ」

 その時、実験室に紫暗の光線の束が放たれた。
 術者はエリーゼ、標的はイリスだ。
 ルドガーはセルシウスに相対した時に抜きそびれた双剣で、光線を斬り払った。

「何するんだ、エリーゼっ」
「どいて、ルドガー! そのヒト、マトモじゃありません。だって精霊を…っ…食べたんですよ!? 絶対! オカシイですよ!」

 反論できない。ルドガーはエレンピオス人だが、精霊が同じ精霊を無機物化して食べるモノだと聞いた験しがないし、何よりルドガー自身がえぐい、と感じてしまった。

「――いいわ、ルドガー。これ以上は貴方が立場を悪くする」
「イリス……」
「認めましょう、エリーゼ。遠い昔、イリスは死にかけた時にこういう精霊に成ることを受け容れた。精霊に、クルスニクと同じ『呪い』を味わわせた上で、食らう精霊。ゆえに邪霊の渾名にも甘んじてきたわ。けれどね、人が動物を食らうように、イリスが精霊を食らうことの、どこがおかしいの?」
「――、え」
「確かに精霊は食事を必要としない。でもイリスは人類と精霊の中間に位置するから、必要なのよ、食事。エリーゼはイリスに飢え死ねって言うのかしら」
「そ、そんなこと言ってないじゃないですかっ」
「貴女がイリスのような半端モノにも情をかけてくれる優しい子ならば、どうか黙認してちょうだい。別に毎日食べなくてもいい。イリスだって好んでこんな食事をしてるわけじゃないのよ。――精霊なんて、本当なら頼まれたって食べたくないわ」

 最後の一言は、ただ一言だったが、場の誰にも分かるほどくっきりと憎悪が透かし見えた。

「イリスは精霊……キライ、なの?」
「大キライ。貴方はスキなの? ジュード」
「それは…もちろん」
「それは精霊という種が? それとも特定の精霊が?」

 ジュードが返答に詰まった。

「例えば特定の精霊を愛していて、ソレと同じカテゴリに属す『精霊』に愛着を感じるというスキなら、それはいずれ貴方自身の足場を崩すわよ。そんな幻想さっさと捨てて、現実を見つめなさい。貴方がすべきは人と精霊を結ぶことじゃなく、切り離し独立独歩で生きていける体系を作ることよ」

 再び部屋に下りる、粘ついた沈黙。
 ルドガーにはイリスに反論できなかった。イリスの持論もまた、一つの正しい選択肢に思えたからだ。


 その沈黙の中、ルドガーの背後から、胎動の音が聴こえた。

「イリス?」

 ふり返ったイリスは、腹を抱えて、銀糸を振り乱して膝を折った。

「イリスっ? イリス!」

 ルドガーは慌ててしゃがみ、イリスの両肩を支えた。イリスは片手で
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