Interview8 蝕の精霊 T
「人間も精霊どもの玩具じゃない」
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の目はルドガーらを越えてイリスを睨み据えた。
『蝕の精霊。またの名を「精霊殺しの精霊」』
実験室がしん、と静まり返った。
当事者であるはずのイリスは、セルシウスの暴露にも泰然と構えて崩れない。その態度でルドガーは分かった。セルシウスが言ったことは本当だ。イリスは精霊を殺すモノで、イリス本人がそれを善しとしている。
「分かっているなら話は早いわね。今すぐそのハコに戻って次の目覚めを待つか、この場でイリスに蝕まれるか、好きなほうを選びなさい」
『戻るものか! それは私の自我を奪い、人形にする道具だ! 私は――精霊は人間の道具じゃない!』
「ええ。けれど、人間も精霊どもの玩具じゃない」
セルシウスのありったけの激情を、イリスは一言の下に斬り捨てた。
その声を合図にしたように床から無数のケーブルが生え、セルシウスを拘束した。
『くっ…この…!』
「お前たちは何度くり返せば気が済むの? お前たちは人間に利用されていると被害者面をするけれど、そう言うお前たちは人間から多くを搾取しているじゃない。精霊さえいなければ、人はもっと自由に幸せに暮らせるのに」
憂いを浮かべるイリスにセルシウスを案じる色は欠片もない。
コードに拘束されたセルシウスに、イリスが悠然と歩み寄る。
イリスは何をするでもなく、ただ、セルシウスの胸の谷間に掌を当てた。その掌が、ずぶりと、セルシウスの胸に沈んだ。
『がっ…あ、ああ、ああああああ!!』
ルドガーは「それ」を立ち尽くして見ているしかできなかった。すぐ横にいたジュードもアルヴィンも。
イリスが手を沈めたセルシウスの胸から、セルシウスの全身が黒く染まっていく。腕も、足も、首も。やがて全身を黒く染めたセルシウスは、木炭のようにひび割れて崩れ落ちた。
現れたイリスの手には、秘色のタマゴが載っていた。
「化石も残さず死ぬというのは誤りよ。正確には、化石をこんなふうに造り変えて、我が身の糧とするのがイリスのやり方。それを他の精霊が誤解して伝えているだけ」
イリスは秘色のタマゴをちょうど真ん中で口に咥え、カッと歯を立てた。
パキパキパキッ
秘色のタマゴに走る亀裂。そしてタマゴが砕け散るのに合わせ、イリスは顎の角度を上げ、卵の破片を残らず口に入れた。
ばきり、ばきり。噛み砕く音を経て、喉がごくんと鳴った。
「ゴチソウサマ。これからお前の凍ての奏で、イリスが有効活用してあげる」
身篭った女のように下腹を撫でるイリスは、ひたすら嫣然としていた。
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