第百八十八話 宇喜多直家その九
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しかしだ、この因幡ではどうかというと。
「降った兵もあえて入れずな」
「鳥取に行かせましたか」
「それであそこには四千の兵が入り」
そのうえでだった。
「他にも多くの者が集まっておる」
「さすれば」
ここまで聞いてわかった、山中もまた。
「鳥取城は」
「人が増えればな」
「それだけ飯を食いますので」
「しかも因幡の兵糧は買い占めておる」
既にだった。
「羽柴殿と小竹殿が若狭の商人達に言ってな」
「ではあの城は」
「間も無く陥ちる」
そうなるというのだ。
「じきにな」
「そして因幡も」
「全て我等のものとなる」
織田家の、というのだ。
「ほぼ一戦も交えぬうちにな」
「凄いことですな」
「そうなる、しかし」
「しかしとは」
「後は経家殿じゃな」
ここで長政は眉を曇らせた、そのうえで言うのだった。
「あの御仁が下手に踏み止まれば」
「兵糧がない状況で」
「そうなれば時間もかかるし」
それにだった。
「人は飯がなければ生きておれぬしな」
「餓えですな」
「餓えることは辛いことじゃ」
この世で最も、というのだ。
「だからな」
「出来る限りはですな」
「降って欲しいものじゃ」
早いうちにというのだ。
「そうすればこちらも楽じゃしな」
「その通りですな」
「さて、そこはどうなるか」
それはだった。
「わからぬところじゃな」
「そのことについてですが」
ここで羽柴が来た、そのうえで長政に言って来た。
「既に策は用意してあります」
「というと」
「はい、それがしと小竹で経家殿を説得します」
そうするというのだ。
「我等とて時が惜しいですし」
「それにですな」
「人が餓えるのを見る趣味はありませぬ」
羽柴にしてもだ、彼はそのことを確かな声で話した。
「それ故に」
「策を用意してありますか」
「左様です、ですから」
「鳥取城はですな」
「間も無く陥ちます」
そうなるというのだ。
「兵糧がなくなることも間も無くですし」
「では兵糧がなくなれば」
「その時にその策を出しますので」
「ではお頼み申す」
「畏まりました」
羽柴は陽気な猿面冠者の顔で長政に答えた。
「では一兵も失うことなく」
「この因幡をですな」
「手に入れましょうぞ」
織田家のその手にというのだ、こう話してだった。
因幡の国人達をほぼ全て加えた織田軍は鳥取城をその国人達の軍勢も加えた二万を優に超える軍勢で囲んだ、そして。
そのうえでだ、羽柴の次の策を待つのだった。
この頃その囲まれている鳥取城の中ではだ、厳しい顔と髭の男が難しい顔で毛利家の旗本達に対して問うていた。
「もう兵糧はか」
「はい、最早」
「あと一日か二日で」
「なくなる
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