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ソードアート・オンライン もう一人の主人公の物語
■■インフィニティ・モーメント編 主人公:ミドリ■■
壊れた世界◆自己の非同一性
第五十六話 絶体絶命の時、重なる二人の想い
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っと代わっててもらうわ!」
 任せとけとは叫んだものの、やはり一人は厳しい。必死で回避と防御をするものの、盾の表面を滑らせて回避できるくちばしの突属性攻撃はともかく、回避できない爪の斬属性攻撃が盾を抜けるダメージのせいでHPが確実に削られていく。シノンをちらりと見るも、未だ攻撃に参加できるほど回復していない。
 このままでは……無理なのか……?

 ――諦めるんじゃねぇッ!!――

 誰かが叫んだ気がした。ミドリの右手が勝手に動き、盾の内側から剣を抜き出した。リズベットに頼んでミズキが使っていたものとおなじ形状にしてもらったこの剣の――この形状の意味が、今になってようやく分かった。重心に振り回されるため一度振り始めたら途中で向きを変えるのが困難で、しかし振り子の要領で振り回すため予測した位置を予測した時間に切り払うことができるこの武器の使い道は――
 ミドリの剣が鋭い音と共にモンスターの爪を側面から強打した。盾では流しきれない斬属性重攻撃を、剣で方向を変え、盾で振り払って回避する! 剣はあくまでも盾の補助なのだ。攻撃するための剣ではなく、防御するための剣。これがミズキの編み出した技の一つだった。

「待たせたわね! 行くよッ!」
 シノンはHPが四割ほどまで回復し、弓で中距離からの援護を開始した。重攻撃技に頭を撃ち抜かれ、敵はスタン状態に陥る。その隙を狙い、短剣に切り替えて連撃を浴びせ、敵が立ち直るのを待たずに再び下がって弓に戻る。シノンは中距離で弓と短剣を切り替えて戦う独自のスタイルをこの戦いの中で考えだしていた。
 しかしアタッカーがシノンだけではやはり攻撃力が足りない。ポーションを飲んで回復を待ちながら戦っているというのに、すでにジリ貧になりつつあった。

 しかし、ミドリの期待通り――
「真打ち登場だよーっ☆」
「扉を蹴破らないでくださいよ、ストレアさんっ」
 ばあんッという凄まじい音と共に扉が破壊され、ストレアとイワンが転がり込んできた。二人は素早く状況を確認すると抜身のままだった武器を構え、突撃してくる。ちょうど挟み撃ちにするような隊形となり、一気に有利な状況になった。
「これなら――いける!」
「ああ!」
 シノンとミドリは頷き合い、最後の猛攻を喰らわせるべく駆け出した。



 やっとの思いでボスモンスターを倒したときはやりきった達成感を味わっていたシノンだが、しばらくすると今更ながら恐怖が彼女を飲み込み、思わずその場にへたり込んでしまった。
「シノン、大丈夫か」
 ミドリの問いかけにも弱々しくふるふると首を振るだけ。やがて絞りだすような声で彼女は言った。
「私……死ぬかと思った。一人で戦うこともできずに無力に怯えて生きるくらいなら、ここで死ぬのも悪く無いかって……でもHPが赤くなって、ここ
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