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或る皇国将校の回想録
第四部五将家の戦争
第五十五話 朱に染まる泉川(上)
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間へとせまる。
祭りの爆竹を思わせる音が響き、先頭を走っていた幾人かが倒れ伏す。後続の者たちが身に刻まれたかのように先陣へと駆け出る
 50間へと迫る! 一斉に銃声が轟き先頭を走っていた者たちの半数が倒れ伏す!
先陣を産めるかのように後続の者たちが走り出る!

「……ッ!散弾急げ!前面だ!」
 さりとて龍州軍も必死であった。兵共はほぼ全員がこの泉川を知っているし、彼らの背後に愛すべきものを抱える者共も多い。兵の士気はいまだ折れずにいた。

「全門発射用意完了!」

「撃て!」

 砲声が轟き先陣が丸ごと消し飛ぶ。
だがそれでもなお後続部隊は足取りを緩めずに皇帝万歳を叫び突進をつづけ――さらに幾百もの男共の血を流しながらついに銃兵達の潜む壕に肉薄し――
「撃て!」
 再び塹壕からの銃撃に次々と崩れ落ち、その抵抗を最後に〈皇国〉の銃兵壕はついに白衣の奔流に飲まれる――

「銃剣構え!」
「ええか!壕からでるなよ!奴らが上に来たら突き上げろ!」
 下士官どもの言に従い兵共が銃剣を異邦者達へと突き出し、切り裂いていゆく。
だが彼らの内の一人が槍衾の先に騎兵銃を届かせ後続の兵は道を切り開いた男をその身を貫く銃剣ごと踏み越えた。

「蛮族どもめ!」
 銃剣を突き出そうとするが瞬く間に隣の〈皇国〉兵の振り上げた銃床に首を叩き折られた。

「畜生!何人いるんだ!」
 少尉がわめきながらも鋭剣で部下に銃剣を振るおうとした白衣の男の腹を切り裂く。
 壕の中に足を着け、銃剣を振るおうとする〈帝国〉兵が次第に増えてゆく、

「予備隊駆け足!急げ!」
 下士官の号令が飛び交い――
「斉射後着剣!総員白兵戦用意!〈皇国〉万歳!」
 銃剣を構えた銃兵達が後続の白衣の軍勢に向けて引き金を引き――そして、かれらも突撃を開始した。



同日 午後第四刻 龍州軍司令部
草浪道鉦中佐


 司令部は早朝よりもさらに深く、重苦しい空気に満ちている。
「辛うじて――陣地線の死守には成功している。だが現状では明日の攻勢には耐えられん」
 宮野木家陪臣出身の龍州軍参謀長が細巻を押しつぶしながら言った。
「陣地の生命線たる擲射砲はまたもや壊滅状態だ。かといって夜戦を挑めるような戦力はない、それどころか白兵戦で銃兵の消耗を強いられてしまった事で防衛線の維持もままならん。あのままあそこを固守しても明日一日保持できるかどうか、予備壕に集結して悪戦するくらいしかないだろう――戦務、意見はあるか?」

「敵の予測行動についてですが、火力優越に任せて突撃を行います、火力をつぶせば防御陣地など恐れるにあたりません。
そもそも龍州軍は第三軍とともに龍口湾の戦いで重砲を損失しています、集積地の物を持ち出して穴を埋めておりますが、配備
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