第四部五将家の戦争
第五十五話 朱に染まる泉川(上)
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「どのみち、彼らを助けないことには虎城で死ぬことになるだろう。現在でもはぐれた部隊が敵の軍団と散発的な戦闘で壊乱している。ここで龍州軍が壊滅したら最後の頼みである虎城も守りきれなくなる。そうした意味ではこの命令も妥当性はある」
算術の式を読み上げるような口調で新城が云った。
「それに芽がないわけではない。<帝国>は導術通信を封鎖する事も傍受する事もできないからな情報面に関しては我々の方が上だ。それに馬鹿正直に包囲部隊全軍と戦う必要もない」
「剣虎兵にまた苦労させることになりますな」
「その為の剣虎兵だ、働いてもらわないと困る」
「――第三軍が近くに居れば良かったのですが」と藤森が言うが、
第三軍は虎城防衛線構築の為に最優先で虎城山地へと撤退を行っている――が、既に敵の独立第2騎兵旅団と健脚をもって鳴る<帝国>第24強襲銃兵師団が彼らを補足しており、今日か明日にでも伏瀧川で大規模な戦闘が起きる事が予想されている。当然ながらかつての先遣支隊は独立戦闘能力を買われ、後衛戦闘隊の一員として火消しにあたっている最中であった。
「近くに居たら居たらで面倒に過ぎる、あちらが戦力の半分を引きつけているだけまだマシだろう」
「十万相手にするよりは五万を相手にする方がまだマシではありますな」
今にも掴み合いを始めそうな二人のやり取りを尻目に益山情報幕僚は導術兵を呼びつけた。
「取り敢えず、龍州軍司令部と連絡を取る必要があるな。あちらがどれほど戦力を維持しているかだな」
「銃兵三個旅団弱、砲兵一個旅団弱、騎兵一個聯隊弱・・・・弱の部分が意味深ですな
今晩どうにか動けるようにはするそうですが、ここからどれだけ減ってしまうのやら」
情報幕僚である益山が乾いた笑いを浮かべながら云った。
「総計で1万半ば弱程度か?良く持ち堪えている方だろうな」
「物資の集積拠点だったこともあり、簡易なものですが要塞化を行っていたようです。それと訓練途中だった後備兵も集結させていた事もあります、少なくとも備えはしてあったという事でしょう」
――つまり相応の装備を整えた最中に突っ込むという事か。
新城は不快な臓腑の疼きを自覚し、押し殺す。
「――ここで龍州軍が丸ごと失われるのは危険に過ぎる。ここで上手く機会を見計らって龍州軍と連携して<帝国>軍を開囲させる」
「とはいっても我々が先に仕掛けることになるでしょうな。龍州軍にまともな夜戦能力があるとは思えません、結局は我々が道を開く羽目になる」
藤森が不機嫌そうに唸る。
「剣虎兵だからな。それは当然だ――引き際を見極める必要があるな。その辺りは龍州軍司令部の手腕に期待するしかない」
北領で行った夜戦を思い出し、新城は僅かに頬を歪めた。
――あ
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