第1章 群像のフーガ 2022/11
7話 露見する真意
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フェクトを纏わせていたのだ。それは、奇しくも俺が今まさに使用した片手剣突進技《イグナイトスタブ》であった。このソードスキルは二連撃技の《クロスライズ》や他数種と共に俺が習得できたものであり、さらにいえば第一層におけるソードスキルの熟練度においてはやや過剰気味な育成であると言える。第一層でも数少ない《ソードスキルを操るモンスター》が単調な単発技しか扱えない域に留まっているところから察するに、《ルインコボルド・グラディエイター》なるモンスターは第一層における雑魚としては破格の強さであることが窺える。だが、既にソードスキルが発動してしまってからでは取り返しも付かない。
兜の奥で双眸に獰猛な眼光を満たしながら、獣人の剣闘士は地面を蹴り飛ばして片手剣を正面に突き出す。互いの間合いなど意味も為さぬとばかりに次の瞬間には剣の先端同士がぶつかり合い、刹那、反発力が腕を貫いた。コボルドの握る剣を破壊しながら突き進み、握られた柄ごと腕を破壊し、胸に鍔すれすれまで刃が突き刺さった後にグラディエイターは青い破片となって爆散する。運が悪ければ互いに直撃を受けて相討ちも在り得ただろうが、回避した最悪のシナリオまで推察する場合ではない。
しかし、威力が相殺されてしまったために推進力が削がれ、想定していた距離よりも手前で止まってしまった。《イグナイトスタブ》は冷却時間に入ったことで使用できず、《ソニックリープ》では届かない。《レイジスパイク》では速度の問題で間に合わないのだ。
無力に打ちひしがれながら見つめる先で、宙に浮かされたディアベルは空中でソードスキルを発動させて反撃に出ようとする。だが、それは悪手である。自身が能動的に跳躍してのソードスキル――――ちょうど先程ヒヨリがやってのけた――――ならばまだしも、相手に浮かされたアンバランスな姿勢で成功させるなど、それこそ余程の練度を要する。案の定、システムはそのあまりに不安定な動作をソードスキルの初動とは認識しなかった。むなしく剣をかざす騎士を嘲笑うかのように、コボルド王の凶刃が振り下ろされる。瞬時に繰り出される上下からの斬撃、そして放たれる鋭い刺突。刀スキル三連撃技《緋扇》。
激しい衝撃音が三回、沈黙に閉ざされた空間で弾ける。獲物を屠る獣の爪牙か、或いは不届者に下された王の鉄槌か、鮮烈な赤のダメージエフェクトを刻まれた騎士は力なく吹き飛ばされ、前線メンバーや俺の頭上を越えて、後方でグラディエイターとセンチネルのペアと交戦していたキリト以下同PT所属の2名の近くに落ちる。それに気づいた三人は怒涛の勢いで雑魚を処理すると、キリトが先んじてディアベルに駆け寄る。だが、時は既に逸してしまっていた。
ほんの僅かな時間、キリト達と言葉を交わしたように見えた騎士は視線をこちらに向けるように首を
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