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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第1章 群像のフーガ  2022/11
7話 露見する真意
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四段にも渡るHPゲージが遂に最後の一本となっていた。
 ボスを取り巻いて戦線を築いていたE隊、F隊、G隊が後退し、それまで後方で回復に専念していたC隊が単独でボスに向かって突撃する。すれ違い様にE隊リーダーであるキバオウが、俺達に見せたこともないような信頼を湛えた表情でC隊リーダーであるディアベルの肩を叩いて送り出す姿が見えた。

――――そして、解ってしまった。


「ディアベル……あんただったのか………」


 思わず、口からそんな問いかけが零れるが、返答は当然ない。キリトも呆然と、前線で流麗に剣を構える騎士を見つめて何かを問いたげにしている。
 そもそも、ディアベルがこのレイドのリーダーとなって、キリトも含めて俺達が参加する構図が出来上がった時点で既に決していたのだ。キリトがLAを取れないようにその参加PTに取り巻き殲滅部隊を任命したのも、最後に満を持して大取を飾る形に持って行くのも、また、それを最大の功労者としてレイド全体から支持されるように人気者となったのも、全て騎士がLAを取りにいくために仕組まれていた絡繰(からくり)だったのだ。その代償に、新規プレイヤーが抱くベータテスターへの憎悪を煽ったなどと、恐らくは誰も信じまい。
 前線はいよいよ最後の戦いらしく、コボルド王は再度高らかに吼え、骨の斧と革の円盾を投げ捨てて腰に差す湾曲した刃を引き抜く。対するディアベルとC隊はボスを囲む形で陣形を展開する。タネを知っていればあの薄い本から読み取れる情報だけとは思えないような指揮能力だったのだろうが、ベータテスターなのだから当然ともいえる。迷宮区十九層突破からボス部屋発見までの攻略スピードも知っていれば難しいことなどない。それを今まで気づかなかったのだから、まったく馬鹿な話だ。


「燐ちゃん、何かあったの? 怖い顔してるよ?」
「………そんなことない」


 ふと、いつの間にか隣にいたヒヨリの声で意識を取り戻す。
 思えば、ボスのHPが4本目に達したにも関わらず、未だに雑魚が湧いていない。装備交換の無敵モーションによるものかと思ったが、どうも既に武器の交換は終えているらしく、C隊も鬨の声を上げて剣を振るわんとしていた。コボルドロードも湾刀を高々と掲げ………


「あれは………」


 記憶が、認知を拒絶した。あれは湾刀(タルワール)なんかじゃない………
 刀身が細すぎる。それにあの鍛え上げられ、研ぎ澄まされた美しくも冷たい輝きを、俺は見たことがある。かつて、浮遊城で姿を現した華奢な凶刃。プレイヤーには使い手のいない、モンスター専用の装備にしてモンスター専用のスキルであった――――


「だ………だめだ、下がれ!! 全力で後ろに跳べ――――――――ッ!!」


 声を振り絞ってキリトが叫ぶ。
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